第27話 MSBP
文字数 1,394文字
お祖母ちゃんの手際は早かった。
お祖母ちゃんは私の荷物をまとめると、私を車に乗せてお祖母ちゃんちに避難させてくれた。
体調の悪さは母親が原因だったって、ことだよね。
茉白が元気になるよう、無農薬野菜を取り寄せて料理して、そこに毒を盛っていたということだよね?
同じ人、しかもお母さんが。
お母さんの考えは理解できないし、理解しようとも思わない。
ただ、夢に出てくるのは優しかったお母さん。
それが私にとっては悪夢。
しかし、母親が間違うときは、身の毛がよだつほどの間違いをおかすのである。
そのことはきちんと認識すべきだ。
ロイ・メドー『児童虐待の奥地』
(Munchausen Syndrome by proxy, MSBP)
・虚偽報告、薬理操作、隠れた虐待行為で子どもに病気・怪我を作り、熱心に看病することで周囲の同情を引き、関心が集まることに心地よさを感じる症例。
・子どもの虐待における特殊型。加害者は母親が多い。
・発見が難しく、行為が反復・継続するため、重篤な傷害・死亡の危険がある。
・病名は『ミュンヒハウゼン物語』(ホラ吹き男爵の冒険)の主人公にちなんでいる。
・「ミュンヒハウゼン症候群」という、周囲の関心を引きたいために怪我や病気を捏造する症例がある。その傷つける対象を自分ではなく、身近な人に「代理」させたものが「代理ミュンヒハウゼン症候群」となる。
悪夢も受け流していた。
でも……もしかしたら私、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
だってなんだか体が軽くなったもん。