第1話 プロローグ

文字数 1,144文字

7月25日 PM2:51


新幹線 常世駅に降り立つ小柄な少女。

駅構内にある、壁一面のデジタルサイネージを見上げる。

(大きなディスプレイ……)
ようこそ!

自然と最先端テクノロジーの融合する 常世町真砂タウンへ

すると急に、画面中央LEDビジョンにウサギのアニメが現れる。


ウサギのくりくりお目々が、少女にフォーカスする。

こんにちは!

今日の常世町は一日中いいお天気だよ。

(びっくりした、私に話しかけているみたい)
ウサギは8回ほど、目をパチパチさせる。

その度に微かなシャッター音。

大きなリュックのお嬢さん、この町は初めてかな?
私、のこと?

(周囲をキョロキョロ)

うふふ、そうだよ。
はい。(うなずく)
わあい、はじめまして、嬉しいな!


中央地区マスコットキャラのウサギです。

この町はね、

・真砂グループによる、エンドレスな実証実験タウン


・無料LRTなど各種インフラ整備 住みやすさ全国1位


・生涯にわたる学ぶ意欲を後押し 返還不要の給付型奨学金の充実度全国1位


・ワークライフバランスと子育て支援満足度全国1位

すごいでしょ?

そしてそして、おーいみんな!

私は、東地区の瑠璃ノ浜マスコットキャラの乙姫と、
海坊主の海ちゃんだ。
瑠璃ノ浜の白砂や珊瑚礁は竜宮城のようよ。

遊びに来てね。

地下鉄やLRTですぐだ、待ってるぞ!
では、博士、師匠、先生たちもよろしくお願いします。
わしは西地区の翡翠ノ丘をすみかとする、フクロウ博士じゃ。


翡翠ノ丘は見晴らしがよく、自然あふれる里山が広がっておる。

ハイキングがてらに訪れてみてはいかがかな?

わしは北地区、温泉源の守り神、ドラゴン師匠ぞよ。

万病に効くと言われる源泉掛け流しは、一度体験したらヤミツキぞよ。

私は南地区を巡回している、九尾の狐先生です。


南地区には真砂大学の農学部・園芸部キャンパスが広がっています。

新鮮野菜やフレッシュな乳製品、燻製工房など、三つ星レストランにも負けません。

四季折々の美しいガーデニングも自慢のひとつです。

ウサギはもちろん、みんなであなたを歓迎するよ。よろしくね!
(すごい……聞いていたとおり、ここってただの田舎じゃないんだ)
そのとき、少女のスマホに着信。
あ、お祖母ちゃん、今着きました。はい、はい、常世町役場?

えっと(キョロキョロ)あ、あった、そこの1階のカフェで待っていればいいのね。


カフェ・コーラルっていうの? はい、じゃあまた。

迎えに来てくれるはずの祖父母が、少々遅れるらしい。


少女はゆっくり歩いて、壁の地図の前で立ち止まる。

(ここって、昔過疎地域だったけど、大企業の真砂グループの本社と先端半導体研究施設と工場が移転してきて生まれ変わったって、お父さん言っていた)


(私は今日からここでお祖父ちゃんとお祖母ちゃんと一緒に暮らす)

(私も生まれ変わるんだ……)

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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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