敵か味方か!? 亀戸との因縁③

文字数 989文字

 天神様の太鼓橋、これは本殿までの距離感を強調する演出手法です。
 ここで「あぁ、なるほど!」と思った方はブラタ〇リのタモさんレベル。
 それでは、順を追ってご説明しましょう。

 神社においては、当然のごとく神様のいる本殿を(たてまつ)っているため、その本殿を『ありがたいもの』として印象づける演出が施されています。最も一般的なのは一段高い場所に本殿を設けること。
 神社へお参りに行った際、お賽銭をあげる前に階段を上った経験はありませんか?
 高い所にある本殿を見上げる視線とすることで、敬う意識を誘導しています。
 もう一つ大切な役割を果たすのが参道です。参道の作り方には大きく分けて二通りの方法があり、敷地が広い場合などは真っ直ぐに設け、その正面に本殿を配置します。遠近法を利用して距離感を強調して『ありがたさ』を印象づける方法で、(お寺ではありますが)浅草寺(せんそうじ)はこの例と言えます。
 もう一つは参道を最短距離とせず、あえて遠回りするように設けて直前まで本殿を見せない方法です。相応の距離を歩いた後でおもむろに本殿が目の前に現れる、その劇的な演出例としては明治神宮や日光東照宮が挙げられます。

 では天神様はどうかというと……

 境内が広くないため、遠近法を利用するほどの距離が取れず、迂回するほどの余裕もない――そこで本殿まで真っ直ぐな参道を設け、途中に二か所の太鼓橋を配置しました。
 参道を歩く人は太鼓橋で視線を遮られ、本殿を見ることができません。太鼓橋を登った時だけ本殿を望めますが、すぐに降りてしまうことになります。再び視線が遮られ、焦らされながら本殿に近づくことで距離感が強調される、というのが天神様における演出手法です。
 橋が掛かる池には、その名にあやかってか多くの亀を見ることが出来ます。縁日で捕った亀を誰かが放したのが増えてしまったようですが、天気の良い日には重なるように日向ぼっこする姿も微笑ましいものです。ここでもインスタ映えを狙うなら、この太鼓橋の上から、スカイツリーと天神様の社殿を一つのアングルに収めるのがお勧め。GW前の今はちょうど藤が見頃なので、さらに絵としての美しさも増します。
 太鼓橋の上に立ち、スカイツリーを視界に入れながら「広重がいたらどんな絵柄にするのだろうか」と、想いを馳せるのもいいかもしれません。

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