意外にも、水と緑の街 ②

文字数 1,744文字

 今度は駅から南へ四、五百メートル、徒歩十分ほどで猿江公園に着きます。
 錦糸公園が緑とスポーツ・イベント機能に重きを置いていたのに対し、ここはまさしく水と緑の公園です。

 新大橋通を挟んで南北に分かれた敷地は十四万㎡を超え、東京ドーム三個分となります。この広大な敷地は幕府の貯木場だった場所なので、運搬に必要な水路である横十間川に面しています。
 開園は昭和七年、東京都の管轄として南側区画のみ整備されました。同区画には江東公会堂(現ティアラ江東)が昭和四十年に建設され、演劇やコンサートなどの他にバレエ振興へ力を入れていたり、江東区内の小中学校の観劇や合唱コンクールなどにも利用されています。
 面積の三分の二以上を占める北側区画は、昭和五十八年に公園として整備されるまで広い原っぱでした。中央部には貯木用の入り江のような池があり、周囲には簡単な柵があったのかもしれないけれど、こっそり中に入って虫取りをしたり、イチジクの樹に上って実を取って食べた思い出があります。奥の方まで行くと迷ってしまいそうなほど広かったので、道路近くでしか遊びませんでしたが(^^;)。

 南側には野球場、北側はテニスコートがあり、広場が中心で遊具は少ないのが特徴です。そうは言っても全体が広いから少なく感じるのであって、「冒険広場」には滑り台が二つ付いた大型遊具や、アスレチック遊具、変則ブランコなんかもあって子どもたちには人気です。「健康広場」にはトレーニング用の遊具やバスケットゴールもあり、高校生から大人向けな感じ。都で管理しているだけあって、誰にでも楽しめる公園です。
 ここも桜が多く、花見の頃にはとても賑わいます。お花見の名所と言うと、上野公園の園路を始め、土手沿いなど並木として桜が植えられていることが多いですよね。歩きながら桜のトンネルをくぐっていくのも素敵ですが、錦糸公園や猿江公園のように広場の廻りに植えられているのを眺めるのも、また一興です。特に、ここは広いスペースが多くて宴の場所を確保しやすいため、子ども連れを始めたくさんのグループが花見(お酒?)を楽しんでいます。

 もう一つ、この公園の特徴は川沿いの立地を生かした親水施設です。
 南側の野球場横には二つの池(上池、下池と呼ぶそうです。知らなかった)を小川が結び、滝や四阿(あずまや)もある散策路になっています。日本庭園風ではあるけれど、あまり作り込まずに自然に近い雰囲気を意識した造りです。そのためか野鳥も豊富でカモやオナガ等をよく見かけますが、なんとカワセミも来るらしい!
 十年以上前から目撃情報が(写真も)あり、今ではカワセミ狙いのアマチュア写真家の方が一日張っていることもあるそうです。少し離れると亀戸中央公園と言う大きな公園もあり、タイトルの通り、意外と緑が多い地域なんです。鶯の声も聴けるし、トビが空を舞う姿も見れます。カワセミはこの目でぜひ見てみたいなぁ。
 あの花壇街からカワセミのポイントまで、歩いて十四、五分くらい。この事実にも改めて驚きますね。

 北側には横十間川に沿った遊歩道やじゃぶじゃぶ池があります。幼児が遊べるじゃぶじゃぶ池は深いところでも十センチ程度、安心して遊ばせることができます。周辺には腰を下ろすのにちょうどいい岩場があり、木陰もあるので、夏休みは親子連れに大人気のスポットです。じゃぶじゃぶ池の下流はせせらぎになっていて全長は三百メートルほどにもなり、また池のすぐ近くには貯木場の景観を残す「ミニ木蔵(きぐら)」という、材木を保管するのに使用した人工池もあります。
 木材は水中にあると腐らずに長持ちするんです。濡れたり空気に触れたりを繰り返すことで傷んでしまうので、江戸時代から、常に水分を含むような護岸工事には松杭を使用していました。中央区・京橋や銀座辺りでは古い建物を解体すると、当時の松杭が出てくることもあります。
 貯木場として使われていた頃、水中に材木を沈めて保管するための重しとなった石が、このミニ木蔵の護岸に使われているそうです。

 他にも、墨田区・江東区には川を利用した親水公園がたくさんあります。
 引き続き、錦糸町周辺の親水公園などをご紹介します。

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