君はハイセイコーを見たか ③

文字数 1,639文字

 ダービー通りの突き当り、四ツ目通りを渡ると花壇街なので、ダービー通りを含めて「花壇街」と思っている方は多いようですが、似て非なるもの。様相はかなり異なります。

 ダービー通りは昔の長屋タイプの飲み屋さんが多く、カウンターのみという小ぢんまりとした店が並びます。もう十年以上前になりますが、ここで火災があり一角がビルに建て替えられたけれど、クラブなどのお店が数十件入りました。このことが花壇街とダービー通りの大きな違いを示しています。
 花壇街は建て替え時に上層をマンションにするなど、食や住といった生活と密接な関係を持つ地域であるのに対し、ダービー通りは住む人が少ない、新宿・歌舞伎町的な歓楽街なのです。
 昼間はお店も開いていないし、生活感も薄いので人通りも多くはありません。多国籍なのは共通していますが、お店の種類も居酒屋やバル等の飲食というよりもキャバクラや外人パブなど女性を隣にして呑む店か、競馬ファンをあてにした一杯飲み屋。夜になると客引きが街角に立ち、しかも外人の客引きが大勢います。最近でもぼったくり被害の話を聞くし、地元の人間はあまりこのあたりで飲まないんじゃないかな。少なくとも、私は行きません。(^^;)
 でも、こんな感じだからこそ行ってみたい、という人もいるので成り立っているのでしょう。知り合いが「今夜はワールドツアーだ!」と言いながら、楽しそうに夜の街へ消えていくのを見ているので。

 ダービー通りから首都高側に並行して走る馬車通り。この辺りは昭和五十年代までキャバレーがたくさんありました。そのうちの一つはしゃぶしゃぶ店も経営していて、そこの息子が幼稚園の同級生。当時ベンツに乗っていたのを自慢する、いけ好かない奴という思い出しか残っていません。今は閉店し、土地も売却したのか事務所ビルに――やはり住居系ではないんですよねぇ。
 もう一本、首都高側に入った裏通りはラブホばかりだし。住んでいる人が少なければ、街の安全・安心への意識が希薄になるんだと、つくづくそう思います。
 まぁ考えようによっては、人通りも多い花壇街側のラブホよりも、ダービー通り側の方が人目につかなくて利用しやすいのかもしれないけれどね。

 最後に、ダービー通りが生き生きとしている週末、昼間の顔をご紹介。
 WINS東館へ繰り出してきた人たちのほとんどが、このダービー通りへ足を踏み入れます。動線としてそうなるようになっていることもあるけれど、車両が通行止めになっていて、なんか開放的な気分になるからかな。
 車道を歩く人がほとんどなので、歩道はと言うと飲み屋の屋外席に早変わり。簡単なテーブルと折り畳み椅子で、もつ煮でもつまみながらホッピー片手にラジオで競馬中継を聞いている方々を見ることができます。
 もちろん、どの店も平日と異なり昼間から営業中。かつ、競馬のテレビ中継あり。「冷やし中華 始めました」ならぬ「競馬中継 放映中」の張り紙や看板が各店頭に掲げられています。
 車道に新聞を広げて座り、コンビニや魚寅(駅とWINSの中間に位置する、魚屋さん。現在はスーパーのようにお惣菜も扱っていて、マグロぶつ・タコぶつの安売りで有名)で買ってきた肴とカップ酒で過ごす人も。
 そう言えば、WINSを出てすぐの角に、お好み焼きの屋台が毎週出ていました。ここのお好み焼きは生地が厚くてボリューム満点で美味しかった。馬券も買わないのに、お好み焼きだけ食べに行ったことも何回かあります。ここ数年は行っていないけれど、まだやってるのかな。

 最終レースも終わって車両通行止めが解除される十七時になるまで、この通りの賑わいは続きます。


 昔、付き合っていた彼女に「土日の錦糸町は嫌い。お酒臭いしタバコ臭い!」と言われたことを思い出し、少しほろ苦い気持ちになったところでこの話はおしまいに。
 だいぶお腹一杯になってきたかもしれませんが、まだまだディープな錦糸町は続きます。
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