南口、夜十時。駅前の歩き方 ①

文字数 1,885文字

 南口の駅前広場は、演歌ライブと競馬予想だけではありません。

 一時、異様な雰囲気を醸し出す人々に占拠されたことがありました。みんな一心不乱にスマホを操作しています。そう、「Pokemon GO」のレアモンスター出現場所となっていたのです。
「何じゃ、こりゃ!?」と言ってしまうほど、夜になると駅前広場にたたずむ人、人、人。ただ画面を見つめて指を動かしているのは、ほんとに異様な光景です。
 雨の日なんか、駅構内に立っているので、JR利用者にも迷惑。駅員が構内放送で注意しても止めるわけじゃないし、ポケモンならぬ困りもんでしたが、仕様変更になったのか、やっと最近になって見かけなくなりました。

 コマリモンが現れなくなっても、この駅前広場に毎夜現れるのが客引きです。
 夕方六時になる頃から出現し始め、徐々に数を増やしていき九時から十一時頃にかけてがおそらくピーク。その後は少しずつ減っていきますが、終電を過ぎた時間でも生息しています。
 駅前広場だけでなく、現れる場所と時間に傾向があるので、その対策を紹介します。これさえ知っていれば、夜の錦糸町も怖くないっ!


 客引きすべてが悪いとは言いませんが、その被害は利用者だけでなく、同業他店にも及んでいます。客引きによる悪いイメージが周辺のお店にも悪影響を与えて客足が遠のいてしまうため、墨田区では「客引き行為等の防止に関する条例」を平成二十六年十二月に施行、近隣町会や商店街組合などによるパトロールなどの対策も行いました。
 中でも効果的な対策だったのが、嘉門達夫さんの「ぼったくりイヤイヤ音頭」です。この曲は「新宿イメージアッププロジェクト2015」の一環で作られ、新宿東口(いわゆる歌舞伎町辺り)で流したところ、客引きが半減したとのこと。それを知った墨田区も六時〜七時、七時三十分〜八時三十分、九時〜十時の三回、延べ三時間にわたってこの曲を流し、効果を上げているそうです。
 歌詞の一部はこんな感じ。

♪ネオンきらめく繁華街 そぞろ歩きでいい気分
 生ビールを注文したら やってきたのは発泡酒
 皿に残ったエビフライ 次の客に出す
 残った氷を水で洗って 次のお客に使います

 巧妙な罠が待ってます
 法外な値段取られます だまされたならば泣き寝入り
 客引きキャッチにゃ絶対について行っちゃダメよ♪

 さすが、嘉門達夫! やるね。
 歌舞伎町、錦糸町に続いて渋谷センター街でも流し始めたらしい。でも、こんな曲が流れる中でも客引きをしているというのは、かなりの強者(ツワモノ)です。そんな強敵を相手にどう立ち向かえばいいのでしょう。
 基本は『話を聞かない』ことです。
 当たり前といえば当たり前なんだけれど、声を掛けられて話を聞いてしまうと、つい押しに負けて……という人もいるので、まずは無視。走って逃げる必要はないから、話を聞かずに無視していれば、敵はすぐに次の獲物へ移っていきます。
 気をつけないといけないのは、無視しようとしているのに相手の顔を見てしまうこと。客引きはこちらの顔を見て(時には覗き込むように)話かけてくるので、顔を見てしまうと目が合います。そうなると、「逃がさん!」とばかりに畳みかけてくるので要注意。

 断る場合も相手を見ず、前を向いたまま話すこと。客引き()は嘉門達夫さんの防御魔法(ぼったくりイヤイヤ音頭)を破った強者であることを忘れずに。
 そして、断る際の最強呪文は「もう、予約してあるから」
 もし予約なんかしていなくても「予約してあるから」
 困った時には「予約してあるから」
 これは効きます。
 断ってギスギスした感じになるのは嫌だなぁ、と言う場合の応用編は、
「どうですか、この後、キャバクラは?」
「いやぁ、もう次の店を予約してあるから。悪いね」
「そうですかぁ。それじゃ、その後ででも」
「あぁ。その時はまた声掛けてよ」と、こんな感じでお互いの意思を尊重した大人のやり取りをしてみましょう。

 しかし、この最強呪文は使った後の反動(クールダウン)にも気をつけなくてはなりません。
 行くつもりだった店が満席で入れなかったり、どこに行こうかうろうろしていたりすると、「なんだ、予約なんてしていないんだ」と見破られ、ロックオンされた後は向こうのペースでやられてしまいます。店が決まっていなくても、とりあえずはその場を離れてから探す、満席だった場合も来たルートには戻らない、等の工夫が必要です。

 次回は、具体的な傾向と対策についてお話します。

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