錦糸町は、お菓子の街である③

文字数 2,011文字

 みなさんは駄菓子と言えば、どんなものが思い浮かびますか?

 お菓子はスーパーかコンビニで買うのが当たり前の今では、「駄菓子」という言葉を聞いてもどんなものか想像がつかない世代もいるかもしれません。駄菓子とは子供向けの安いお菓子のことで、江戸時代からこの呼び名が使われています。
 小学生の頃はお小遣い五十円を持って駄菓子屋へ行けば、あんずジャムやチョコバット、糸引き飴、オレンジフーセンガム、ふ菓子やベビースターラーメン等々、三~四個はお菓子が買え、それをおやつにしながら遊んだもんです。

 街からは駄菓子屋さんが消え、駄菓子を作る町工場も少なくなったけれど、実は錦糸町は駄菓子製造・問屋が数百も集まっていた街なんです。

 江戸時代から賑わっていた駄菓子問屋街は、神田岩本町あたりにありました。しかし関東大震災により壊滅的なダメージを受け、その後の区画整理で現在の錦糸町北口区域に集団移転することになります。最盛期には飴製造業者だけでも、錦糸町には三百五十軒以上もあったそうです。
 墨田区では基幹産業のひとつとして数えられていたお菓子の製造業も、その数を年々減らし、今ではかなり少なくなってしまいましたが、元気に頑張っているお店もまだまだあります。


  現在も錦糸町で製造を行い、テレビにもたびたび登場しているのが、きなこ棒の「西島製菓」さんです。
 黒糖と水飴を黄な粉で練り合わせた、やわらかい食感の駄菓子がきなこ棒。つま楊枝に刺さっていて、楊枝の先端に赤い色がついていれば当たり!というアイデアを出したのが、同級生のニシ(あだ名で登場したことはないみたいだけれど、いいでしょ?無許可でも)こと、現社長の西島誠さんだそうです。当たりが出てもお店で交換してくれるわけではなく、パーティーや家族などで楽しむだけなんですけどね。(^^;)

 昔は「きなこ飴」という商品名で、割りばしの先に丸いおせんべいのような形のきなこ飴(中身は今のきなこ棒と同じ)がついていました。
 お誕生会を開くと、ニシがいつもきなこ飴を箱ごと持ってきてくれて、それを祖母が楽しみにしていた、という思い出があります。
 小学生の頃は中日の高木守道が大好きで、セカンドゴロを捕って投げる真似ばかりしていたシャイなニシが、テレビ東京の「モヤさま」に出ていたりするのを見るとさすがに時の流れを感じますね。友達はみんな応援していて、「西島君がテレビに出てる!」とLINEが回ってくる程。これからも頑張って欲しいです。
 きなこ棒は一箱五十本入りで三百円。店頭でも販売しています。


 錦糸町の人形焼きは山田屋さんだけでなく、「鵜沢商店(という名前だったと思います)」さんもありました。ここは製造のみで販売をしていなかったけれど、次男のウー君とは小学校六年間ずっと同じクラスで仲良しだったので、たまに箱買いしに行きました。もちろん、ウー君も誕生会には人形焼き持参。(^^♪
 残念ながら、今は閉店されています。


「よっちゃんのぉ~酢漬けイカ~♪ するめじゃ~ないよ、酢漬けイカ! あぁ~よっちゃんのぉ~お、酢漬け~イ~カ~♪」のCMソングでおなじみ(?)の「よっちゃん食品工業」東京営業所も錦糸町にあります。
 同級生のお父さんがここに勤めていて、よっちゃんイカをもらったのが確か小学二年生。初めて食べたその味にカルチャーショックを受け、「イカって美味しいんだ」とイカそのものが好きになりました。
 カットタイプで二十袋で五百八十三円。値段もあまり変わっていないかな。


 駄菓子製造では「西島製菓」と並んで、古くから錦糸町で営まれているのが《ふ》菓子の「鍵屋製菓」さんです。
 四角い棒状の麩に黒蜜シロップが掛かったふ菓子は今でも大好き。あのサクサクした食感と黒蜜の甘さ、特に角の蜜が溜まったところなんて、もう堪りませんね。
「勉強に、スポーツに」のキャッチコピーは昔と変わらず、今でも一日で三万五千本が作られているそうです。
 この辺りの夏祭りでは、子供神輿や山車の巡行を手伝った子どもたちにお菓子を配るのですが、配る側の一番人気がふ菓子。配り終わって余ると、必ず頂いてきてしまいます。(^^;)
 一袋十五本入りで三百四十円。昔は駄菓子屋で一本十円でバラ売りしてくれたから、その頃に比べれば倍になっているけれど、それでも二十円程度だからなぁ。
 やっぱり安いですね。


 ここでご紹介した四件(鵜沢商店さんは既にありませんが)、みんな同じ町内で、歩いて回っても二分と掛からないくらい。限られた地域に多くの駄菓子製造業者さんがあったことをご理解いただけますでしょうか。
 きなこ棒やふ菓子が、安定した力を発揮する駄菓子界のベテラン選手であるならば、中堅やエースも擁しているのが錦糸町の懐の深さ。
 駄菓子のお話は次回も続きます。

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