南口、夜十時。駅前の歩き方 ③

文字数 2,100文字

 夜の錦糸町・南口は十時を過ぎると、危険度もかなり上がってきます。

「キャバクラ、日本? フィリピン? ロシア? All OK!」みたいなカタコト交じりで話しかけてくる外人さんがいたら、身構えた方がいいです。もしついて行くとしても、歩き出してマルイ前の横断歩道を渡り始めたらレッドサイン! ダービー通り方面に連れていかれるとかなりヤバいので、すぐ引き返すべき。その時まで、酔っていても理性が残っていることを願うのみです。
 客引きの出現する場所も、この時間帯からバラけ始めます。今までは錦糸町駅から降りてきた人や、帰ろうと駅に向かう人をターゲットにしていましたが、ここら当たりからは単に酔っ払った人が目当てなので、ピアきんしちょう通りの中程やマルイ横断歩道前、ダービー通り入り口角にあるファミリーマート前にも客引きが現れ始めます。
 注意するのは、やはりマルイ前ですかね。ここも広場になっていて大通りに面しているから「アブない」感じが希薄な割に、ダービー通りまで近いので連れていきやすいというメリットがあります。そもそも近くにお店がないから100%客引きなのでご注意を。(前回の話、メモしてあるかな?)
 ファミマ前の客引きは外人さん率が高く、何と言ってもダービー通りへの入り口ですから……。ここで捉まってしまう人はよほど酔っているのでしょう。
 ひょっとしたら、花壇街で呑んでいて、帰ろうと信号を渡ったらファミマ前で捉まってしまい、ぼったくられた……。そんな経験をした人が、「花壇街は怖い」「治安が悪い」などと言っているのかもしれません。

 もう一つ、この時間帯から

が立ち始めます。
「オニイサン、マサージ、イカガデスカ?」という中国人?女性です。これが何より(たち)が悪い。
 超低料金でのマッサージを持ち掛けておきながら、段々とH系なことを匂わせて店へ連れていく。するとおばさんが出てきて……という、立ちんぼ詐欺とでもいうような手口です。もちろん、Hなことは何もなく、ロクなマッサージもしない。
 ぼったくりと比べて被害額は少ないけれど、被害者数は膨大なのでは。そう感じるくらい、深夜に向けて彼女たちはわらわらと湧き出してきます。

 十一時を過ぎる頃には、居酒屋系はほとんど撤退。カラオケ系は残っているものの、キャバクラ・外人パブ系とマサージお姉さんたちとの一騎打ちが始まります。
 たいていの場合、先手はキャバクラ系。
「お兄さん、この後キャバクラどうですか?」と声を掛けてきた(あん)ちゃんを振り切ったと思ったら、「オニイサン、マサージ、イカガデスカ?」とお姉さんが寄ってきます。
 無視して歩いていくと、また別のお姉さんが「マサージ、イカガ?」……。
 決して誇張しているわけではなく、本当に次から次へと襲ってくるんです。
 
 そして、終電がなくなってしまうと、お姉さんたちの天下。
 キャバクラ系が減り始めても、お姉さんたちは至る所でたむろして獲物が通るのを待ち構えています。出現ポイントは決まっていて、南口の駅前広場の他には次の四カ所。
 まず、WINS西館と京葉道路を挟んで反対側にあるセブンイレブン前。
 次に、おなじみマルイ前。
 そして、楽天地ビル入り口。
 最後に、ロッテシティホテル前。
 これらの場所にはある共通点があります。何だと思いますか?
 謎を解くカギは既に明らかとなっています。


 答えは、どの場所も幹線道路を渡る横断歩道の前、でした。
 ミステリーマニアの方なら、理由はもうお分かりですよね。
 では、解説編です。
 京葉道路のような幹線道路は道幅が広く、車両の通行量も多くなっています。そのような場所にある横断歩道は、信号が青に変わるまでの時間も長い。横断歩道を利用する人は信号が変わるまでどうするか。そう、立ち止まって待ちます。
 客引きを相手にしないためには、無視して立ち去ることが有効ですが、横断歩道の前では立ち去ることが出来ません。彼女たちは逃げられない獲物を捕らえるために、横断歩道の前で待ち構えているのです。
 深夜に信号待ちしていると二、三人は入れ替わりで寄ってきます。道路の反対側からも幾つもの視線が。渡っていくと、さっき断ったのを見ていたはずなのに、性懲りもなく寄ってきて……まったく、お前らはゾンビかよっ!


 錦糸町の夜を歩く時の傾向と対策は、これまで。
 やけに詳しいから、よっぽど痛い目に合ってるんじゃないかって?
 いえいえ、客引きについて行ったことはありません。
 飲む場は好きだけれどお酒に弱いので、理性がなくなるほど飲めないし。夜の錦糸町をうろつくことは多々あるので、声を掛けられた経験は数え切れませんけどね。
 客引きについて行った後のことは、ある友人の体験談です。ほんと学習しないというか、普段は腰も低く大人しい感じなのに、酔うとすぐ調子に乗っちゃうんだよなぁ。いい加減に懲りた方がいいぞ、○○。


 次回からは、「触れなくてもいいか」と思っていた、祭りについて語ります。
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