山野 裕之 ③

文字数 1,188文字

 撮影に入る前に、具体的なテーマをどうするのか、どんな動画にするのかを班ごとで話し合う。大まかな方向性が固まったところで、それぞれの公園の良いところについて、利用している人に取材をしてみることになり、総合学習の時間を利用して錦糸公園と大横川親水公園へ行く予定になった。一つ想定外だったのは、区役所の事務局へ不明な点を問い合わせした際に、校外学習として取り組むことを知った担当者が学習の様子を取材したいと申し入れてきたことだ。区立の小学校と言うこともあり、拒む理由がないので定期的に事務局が取材に来るようになった。

 九月十九日、あらかじめ質問メモを作った子供たちを引率し公園に行く。区の担当者は学校に来てから、一緒についてきた。公園では、慣れないながらもメモを見て利用者へ質問して廻り、一時間ほどで終了。その様子が区の公式フェイスブックにアップされると、それを見た子供たちのヤル気度もアップしたように感じる。
 次に、各公園を利用している方たちの声も反映させ、具体的な撮影計画を練るように指導した。併せて、スマホでの撮影方法や編集の仕方、YouTubeへアップするときの注意なども教えていく。撮影は先生方のスマホをお借りして、Iphoneアプリの「iMovie」で編集することにした。
 九月の終わりには各班の絵コンテも出来上がり、あとは撮影・編集を行うのみとなった。

 十月に入り雨が多く、撮影は中旬に延びてしまった。予定日の十月十一日も天気が心配だったが、曇り空の中、二グループに分かれて撮影を行った。予定通り、私は錦糸公園へ。
 各班とも個性が出ている。説明者を二人一組にして場面ごとに交代していく班、映像だけ撮っている班。撮影場所も体育館前だったり、ロケット滑り台や公園から望む錦糸町駅を映したり。カンペを作っている班や英語の説明を入れる班、噴水広場の芝生で転がる様子を撮影する班もあった。何度も撮り直しをしながら撮影している。それぞれ、どんな作品に仕上げるのだろう。
 学校へ戻り、親水公園グループと合流して、引き続き編集作業の時間となった。子供たちは意見を出し合い、絵コンテに沿ってまとめていく。
 最後に、出来た作品の工夫した点などを交えながら、グループごとに発表を行った。映像とナレーションのみの作品や、ナレーションもなくBGMのみだったり、スケッチブックに描いた絵をカットインさせたりと、様々な工夫が見られ、子供たちみんなが達成感を感じた表情を見せてくれた。当初の狙いだった「自然と触れ合う」点は薄れたものの、地域の方や友達とのつながりを感じ、自分たちで考えて作り上げる楽しさを知る、良い経験となったはずだ。

 これで校外学習も終わり……のはずが、これがきっかけとなり錦糸小全体を巻き込んだ大事(おおごと)になるとは。
 このときは思ってもいなかった。
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