河内音頭 vs 江戸神輿 ④

文字数 1,991文字

 亀戸にある三つの神社の一つ、天祖神社の氏子は錦糸町北口方面が含まれています。うまい棒の「やおきん」本社がある横川もその一つ。ならば、天祖神社の例大祭も取り上げねばなるまい、と半ば強引にご紹介します。

 と言うのも、実家は亀戸天神の氏子なのでそちらでの経験が長いのですが、現在は天祖神社の氏子地域に数年前から住んでおります。いつの間にか、こちらでも睦に入ることとなりまして、昨年の例大祭にも参加しました。
 天祖神社の大祭は五年に一度、それが昨年でした。しかも例大祭として、数十年ぶりという渡御行列(神幸祭)と神輿連合渡御(神明祭り)を実施したのです。
 宮司を始め、各町の氏子総代も経験がないことなので手探りながらも準備を進め、当日を迎えました。流れとしては天神様の大祭に似ています。

 九月十六日の神幸祭は、宮神輿や獅子頭を花車に乗せ、神官役が曳きながら氏子町内を巡行します。宮司は馬に乗り、魁は猿田彦、前方ならびに後方を四神(ししん)旗(青龍旗、朱雀旗、白虎旗、玄武旗)が囲み、旗持ちなどは各氏子町会の代表が務め、町境で次の氏子町会へ渡す、というやり方です。
 元々、天祖神社では宮神輿の巡行を三年に一度行っており、その際は宮神輿を各氏子町会が担いで行き、町境で次の氏子町会へ手渡す、という珍しい方法をとっていました。一基の神輿を持ちまわるのも比較的珍しい例ですが、町会ごとに引き継ぐとしても、いったん「馬」と呼ばれる台の上に神輿を置き、そこで担ぎ手を交代させるのが一般的だと思います。
 しかし、天祖神社では「馬」には置かず、手渡しなのです。手渡しといっても数十人で担がなければならないほどの重さがある神輿なので、容易ではありません。万が一にも神輿を落とすことなど出来ないし、そもそも落としたら怪我人が出るでしょう。渡す側と渡される側が息を合わせて入れ替わる、一見地味ですが緊張感と背中合わせの玄人好みな見せ場かもしれません。一昨年初めて経験した時は、うまく引き渡した後で(おしっ!)と心の中でガッツポーズしちゃいましたから。
 そういった流れを受けて、神幸祭でも手渡しで引き継ぐことになったようです。

 昼前から始まった神幸祭はつつがなく進み、午後七時前には無事に宮入りとなりました。あとは翌日の神輿連合渡御なのですが――翌日の天気予報は雨。
 さらに台風直撃の恐れあり! さぁ、どうなるのか?

 で、翌朝五時半に神酒所へ行ってみると、昨夜来の強風と雨でテントの一部が捲れたりしていましたが、幸いにも小雨だったので、神輿にビニールを掛けて出発場所までトラックで移動。亀戸地区の四町会のみ七時半に渡御開始で、集合場所の錦糸公園前(天神様の休憩場所と同じ)へ向かい、全体十五基が揃ったところであらためて宮入に向かう予定です。
 渡御の中止も検討しなくてはいけないような予報でしたが、数十年ぶりの連合渡御でもあり、七時半の時点ではほとんど止んでいたので、予定通り出発!
 が、三十分も経たないうちに本降りになり、体も冷えてきたので、京葉道路から錦糸公園へ向かう途中で予定していた休憩も取りやめて、まずは集合場所の錦糸公園を目指すこととなりました。錦糸橋という急な坂の橋があるのですが、そこに差し掛かった頃が最もテンション低かったかも。濡れて滑ると危ないし、担ぐというより運ぶようにして神輿を進め、集合場所に着いた頃は担ぎ手たちにも既に疲れが見えていました。

 気合を入れ直して再出発した後は、春日通りを右に曲がり天祖神社を目指します。やおきん本社のすぐ近くを通り過ぎ、栗原橋のたもとにある、スカイツリーの観光バス用駐車場に十五基すべてがいったん入りました。宮入前の最後の休憩所として貸し切ってあり、ここから順に宮入りしていきます。
 ここで、ふいに耳元で悪魔のささやきが……。うちの町会は最後の方の宮入順だったので、そっと休憩所を抜け出して――歩いて五分ほどの我が家へダッシュ!寒くて冷えたのとトイレに行きたくなった(休憩所にもありましたが、超混んでた)ので、一度家に帰って着替えとトイレ。見た目も中身もさっぱりしてから、何食わぬ顔で休憩場所に戻りました。半纏は濡れたままだから、バレなかったし。もし出発しちゃってたら、超怒られただろうけどね(^^;)。

 そして十二時には無事、宮入り。狭い境内で何度も差し上げしていたのでかなり時間は押してしまいました。天候を考慮して、午後に予定していた町内巡行を中止、山車用のお菓子は翌日に配布することにして解散。すぐにシャワーを浴びて温まってから、ゆっくり昼寝させてもらいました。
 大変だったけれど、これもいい経験かな。

 お祭りに関するお話はこれまで。
 次回からは、これも紹介したかった、錦糸町の公園について語ります。
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