敵か味方か!? 亀戸との因縁⑤

文字数 2,729文字

 下町グルメの紹介などでは、「亀戸ぎょうざ」「亀戸ホルモン」「亀戸大根」など、亀戸の名の付く逸品が頻繁に登場します。一方、錦糸町の名の付くものは……残念ながら聞いたことはないですね。

 あらためて調べてみたら「亀戸餃子」が正式な店名らしいけれど、暖簾に書いてあるのは「亀戸ぎょうざ」なので、こちらの方が馴染みがあります。
 この店は他に例を見ない?餃子版わんこそば方式で、席に座ると餃子が二皿出てきます。フードメニューはライスすらなく、お客さんは飲み物を注文するだけ。あとはストップするまで一皿五個の餃子を食べまくります。ただし、わんこそばが定額食べ放題なのに対し、亀戸餃子は食べた皿数分のお支払い。一皿二百五十円です。(錦糸町や両国などの支店では、チャーハンやラーメンもメニューにあります)

 ホルモン焼きは「亀戸ホルモン」「ホルモン青木」「初代 亀戸ホルモン吉田」といったところが人気店。いずれのお店も常に混んでいて、予約を受け付けていないこともあり、いつも夕方からお客さんが行列している印象があります。
 こちらのホルモンは雑誌などでもよく紹介されているので、詳細は省略(笑)。七輪でガンガン焼くので、服には匂いがついてしまうことを覚悟してお出掛け下さい。

 亀戸大根は少し小振りで辛みのある大根。毎年三月中旬には、亀戸地区の小学校などで育てた亀戸大根を奉納する神事「亀戸大根収穫祭・福分けまつり」が香取神社にて行われ、亀戸大根を使ったお味噌汁が振舞われます。ちなみに、香取神社には大根の形をした「亀戸大根の碑」なる堂々とした高さ二メートルを超える石碑もあるので、お近くへお越しの際にはぜひ。
 この大根を使った料理では、亀戸升本の「亀戸大根あさり鍋」が有名です。味噌仕立ての鍋で、あさりや亀戸大根のほか、白菜、ネギ、エノキなどが入ったヘルシーな逸品です。料亭なので、夜はちょっと敷居が高い感じですが、ランチメニューにもあるのでお試しください。地元では、亀戸大根を使った仕出し弁当がよく利用されています。


 錦糸町も昔から飲み屋は多いし、和洋中の他にもタイ料理やインド料理のお店もたくさんあるのに、名物と言われるとさて?と考えてしまいます。うーん、と悩んだ結果、私のイチ押しは、これに。
 「やきとり」です。

 繁華街には焼き鳥系の飲み屋さんは付き物ですよね。錦糸町にもチェーン店系の「鳥貴族」「とり鉄」「鳥光圀」を始めとした多くのお店がありますが、他所に比べて、単独のやきとり屋さんが多い気がするんです。こじんまりとやっている美味しい店が多いので、独断で錦糸町名物に決定!
 ミシュランで一つ星を取った「とり()」という超有名店は色々な媒体で紹介されているので(行ったことないし~)、お勧めの「力屋(RIKIYA)」をご紹介します。

 錦糸町駅・南口から歩いて三分ほど、東京トラフィック錦糸町ビルの裏手にあります。ここは錦糸町でも一、二を争うほどの超いかがわしい裏通り。
 小学生の頃はトルコ風呂(現在のソープランド)の他、風俗系のお店が目白押しでした。ちょっとここを通るのは勇気がいるくらいでしたが、かかりつけの歯医者さんへ行くには近道だったので、たまーに。(^^;)
 今ではかなり減ったものの、昼間からお兄さんが呼び込みをやっているお店が二、三件あり、女性が一人で通るのは尻込みしてしまうかもしれません。
 そんな立地にもめげず、隠れた人気店で、予約なしでは入れないこともしばしば。いつも一人でふらっと行くので、「あぁ~今夜は残念」と、斜め向かいの「夢来鶏(むくどり)」さんへ向かうことも度々あります。ここのやきとりも美味しく、女将さんが小柄で可愛いらしい感じなので居心地はいいです。

 話を「力屋」に戻しましょう。
 店内は、調理場の前に焼杉の一枚板カウンターがあり七席。ゆったりとしたテーブル席は四十ほどで和モダン調のインテリアです。
 焼き鳥屋さんというとオジサンたちがカウンターに座って飲んでいるイメージがあるかもしれませんが、ここのカウンターはいつもカップルで占められています。通い始めて三年ほど経ちますが、その間にオジサン二人組がカウンターに座っていたのを見たのは一度だけ。そう言う私(れっきとしたオジサンです)は、いつもカウンターの端でミステリーを読ませてもらっています。

 ここは、とにかく焼き鳥が美味しい!お肉は○○産、と決めずに、時期や部位によって国内四か所から仕入れているそうです。
 いつも塩で頂いていますが、炭火による焼き加減がどれも絶妙です。
 皮は表面がパリッと香ばしく、噛めば脂が口の中に広がり、大き目のささみは山わさびのしょうゆ漬けと一緒に食します。砂肝は適度な弾力のある歯応えを残し、上ハツは独特なプリプリした食感……自分で書いていながら、食べたくなってきちゃった(^^;)
 中でも上レバーは「レバーが苦手」という人にも食べて欲しいくらい。焼き過ぎるとパサつく感じになるレバーは多いけれど、この上レバーはややもっちりした食感で濃厚な味わい。臭みも感じず、超オススメ。ここに行くと必ず頼む一本です。
 品に合わせて焼くので、串盛りを頼んでも若干の時間差で出てくるのが、またいいんです。美味しいものを美味しいタイミングでどうぞ、と言われているようで。

 そして、もう一つ特筆ものなのが旬の野菜料理。季節の野菜を創作系の料理で提供して頂けますが、どれも素材の味を生かした調理法で、とても美味しい。特に気に入っているのは、出汁(だし)の使い方です。出汁そのものも美味しいし、野菜の味を損なうことがありません。
 先日いただいた「ウドと湯葉のお浸し」は、これがウド?と驚くほど柔らかな触感に調理されていて、厚切りにされたウドと柚子の利いた出汁がいい塩梅。湯葉のまろやかさと相まって、一口食べたときに思わず微笑んでしまいました。
 そうそう、一人だと量が多い場合は、ハーフサイズを作ってくれる心遣いもうれしいですね。

 器も凝っていて、盛り付けも美しく、手際が良くて仕事も早い。
 いつも調理場から出てきて、店の外までお見送りもしてくれる。
 あの店主さん、只者ではないはずです。

 行ったことはないけれど気になっている「安藤」、宮崎地鶏の炭火焼きが美味しい「みのと」、もはや焼き鳥は関係なく、単に好きな店として「太陽のトマト麺」シュラスコが美味しい「ビストロ ガフ」を錦糸町代表としてお薦めさせて頂きます。
 「力屋(RIKIYA)」を含め、錦糸町へお越しの際にはぜひお立ち寄りください。
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