プロローグ

文字数 679文字

 こころは、どこにあるのかな?
 身体に血液を送る心臓は、胸にある。記憶したり考えたりする脳は、頭にある。
 じゃあ、嬉しかったり、怒ったり、悲しんだり、楽しかったり…、誰かを、好きでいる気持ち。大切に思う気持ち。それは一体、どこにあるのかな?
 人間にある、感情っていうもの。それはとっても不思議なもので、いい影響も、悪い影響も、全部身体に与えてくれる。

 どくん、どくん。

 (そば)に好きな人が近づいてきた時、ドキドキする気持ち。ときめく気持ち。心音が早くなる。だからやっぱり、この大切な気持ちは、胸にしまわれてるのかな。もし心臓が止まったら、この大切な気持ちも、一緒になくなっちゃうのかな?
 考えれば考えるほどに、わからなくなってきた。こんな大切な気持ちが、心臓が止まっただけでなくなってしまうなんて、信じられないよ。
 そうやって考えるのは、頭の中。じゃあやっぱり頭の中に、この大切な気持ちがあるのかな? 堂々巡りになってきた。
 …やっぱり、大切な気持ちは胸の中にしまわれているはずだ。だって、心臓には、こころっていう文字が入っているから。
 胸がしめつけられる。この大切な気持ち。心臓が止まったくらいでなくなったりはしない。ずっとずっと、この気持ちは大切な人に伝わり続けるんだ。
 不思議と駆け足になる。大切な気持ちが大きくなる。手を伸ばす。ぎゅっとしてもらえば、どんなものだって怖くない。
 あったかくて、ほっとする。ずっとここに居たい。それがこの大切な気持ち。
「ねえ、こころはどこにあると思う?」

 どくん、どくん。
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