子供だった頃の守り人・7

文字数 1,965文字

 食堂に着けば、お腹を空かせた院生達。

「皆さん集まっているようですし、誰かが帰らない間に紹介をしてしまいましょう」
 言って、司祭様は少女の顔を見下ろします。

「私について来て下さいね。これから一緒に暮らす子達に紹介しますから」
 少女は、司祭様の言葉に頷き、二人は食堂の奥へ。司祭様は、背中を窓のある方に向けると、少女を自分の前に立たせて。

「皆さん、ちょっとだけこちらを見て貰っていいですか?」
 その声に、孤児院の皆は司祭様の方を向きました。そして、皆の視線は司祭様と少女の方へ。

「今日から、ここで暮らすことになった子を紹介します。事情があって声が出ないようですが、仲良くしてあげて下さい」
 司祭様の話に皆は頷き、少女は頭を下げたりして。

「では、私は戻りますね。後は頼みましたよ、アーク」
 そう言うと、司祭様は少女を連れて私の方へ。そして、少女を残して食堂の外へ行ってしまいました。皆の視線がこちらの方に向いていますが、少女の分も含め先ずは食事の準備をしなければ。色々と話すのは、席に着いてからでも遅く無いでしょう。

 少女に説明をしながら開いている席に座ると、興味を持った何人かが集まって来たりして。とは言え、少女は声が出ないので会話をすることは出来ないのですが。

 それでも、皆は新しい仲間に友好的に接してくれ、一安心。少女も御飯を食べ終えましたし、そろそろ部屋に戻りますか。長居をすると、料理担当の方が良い顔しませんから。

 それから二日後、少女の歓迎会を行いました。皆、普段は食べられない料理を食べられたりするせいか笑顔が絶えず。だと言うのに、少女は相変わらず声も出せず、そのせいか表情も変わらなくて。幸い、孤児院にはそれを咎める人は居ません。皆が皆、辛い過去を抱えてここに居て、その分他人に優しく接することが出来る。そうして、優しさは受け継がれて……

「こんばんは」
と、司祭様が到着されましたね。少女へのプレゼントや、追加のお菓子を持って。毎度のことなので、慣れた子達は司祭様の周りに集まってお菓子を持っていって。司祭様は司祭様で、それを上手くあしらいながら少女に近付いて。

「はい、プレゼント。大切にしてあげて下さいね」
 プレゼントを貰った少女は頭を下げて、皆は開けて開けてとはやし立て。少女は少女で、首を傾げながら司祭様の顔を見上げて。

「どうぞ、開けて下さい。折角、アークが選んでくれたんですから」
 司祭様の言葉を聞いた少女は頷いて。プレゼントを見ようと皆が集まって。でも、男子達はぬいぐるみと分かるなり残念そうに離れて。女子は、羨ましそうに眺めもするのですが、少女に表情は無くて。

「大丈夫ですよ、アーク」
 私の考えに気付いたのか、司祭様は耳打ちして。
「皆さん、あまり遅くならないうちに寝るんですよ。それと、出したゴミはちゃんと片付けて下さいね」
 司祭様の話に、皆は快く返事をして。楽しそうな子供の声を聞いた司祭様と言えば、嬉しそうに頷きました。

「では、おじさんは抜けますね。あ、好きなお菓子が有っても、一人占めは駄目ですよ?」
 などと言って司祭様は退室し、それにも関らず「はーい」という返事が聞こえて。司祭様曰く「子供同士の方が盛り上がるでしょう? 年長者が居れば、大きく羽目を外すことも無いでしょうし。勿論、必要に応じてサポートはします」とか。

 確かに、大人が居ると居ないとでは違いますからね。良い子を演じようとする子だって居ますし。年長者が居れば大丈夫……とまでは行きませんが、纏め役が居なければどうなるか分からないのは事実。

 プレゼントの受け渡しも終わりましたし、私も何か食べましょうか。
 日付の変わる数時間前に歓迎会は終わって。私は、主役である少女を部屋に送ると、会場の片付けを。こういう時、率先して片付ける子も居れば、何が何でも逃げる子も居たりして。まあ、逃げた場合、後でゆっくりと怒られたりする訳ですが。温和なようでいて、怒らせると長いんですよね、あのお方は。

 食器は洗い始めているようですし、私はゴミ集めでもしましょうか。簡単なようでいて、意外に面倒なんですよね集めるの。注意しないと、何か良く分からない液体が垂れてきたりして。
 会が終わってから数十分で片付けは終わり、皆はそれぞれに部屋へ戻って行きました。私も、最後の一人を見送り、少女が待つ部屋へ。部屋へ戻ると、そこにはベッドの上で横になる少女の姿が。全く反応が無いところを見るに、眠っているのでしょうか?

 ドアを閉めて少女に近付けば、少女は目を瞑って寝息を立てていて。その胸には羊のぬいぐるみが。包装に使われていたリボンなどは枕元に置かれていますし、これは気に入ってくれたと解釈していいのでしょうか? とにかく、少女が風邪をひかないように布団をかけましょう。
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登場人物紹介

ダーム
 
大体元気なショタっ子。

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