ぬめり成分がフコイダンだったら体に良い

文字数 2,762文字

「では、3回戦の説明を始めますね」
 それを聞いたルビアは困ったように左右を見回し、ルフィエと顔を見合わせる。ルフィエは、微苦笑しながら司会の顔を見ると、そのまま自分達への指示を待った。

「3回戦は、1対1のトーナメント方式。この戦いで優勝者を決定いたします!」
 しかし、司会者は次の戦いの説明を続け、ルビアとルフィエは残念そうに溜息を吐いた。

「組み合わせ方は、単純にして明快。今、並んでいる順で組んで頂きます」
 そう言うと、司会は出場者の方へ顔を向け、その並び方を確認する。それにより、司会は敗退者の存在に気付くが、今更その二人について言及することも出来なかったのか彼女達に目を合わせようとすらしない。

「初戦は、アイーシャ選手対ツヴァイ選手。ルゲニア選手対フィーラ選手。ライラ選手対エレナ選手。そして、リリス選手対ベネット選手」
 その言葉に、幾らかの参加者は無言で対戦者の顔を見た。

「言うまでもなく、準決勝と決勝は勝ち残った方同士の戦いなので、組み合わせは後々」
 そこまで話すと、司会は口元に手を当て笑い始める。そんな司会の態度に不快な感情を抱く者も居たが、それが表だって現される事はことは無かった。

「勝敗の決め方ですが、先ずはステージをご覧下さい」
 その声に参加者はステージ上へ目線を移し、観客達はステージの方へと体の向きを変える。

 ステージは、1回戦の時とは形が変わっており、その両端には簡素な梯子が付けられていた。その梯子の高さは4,5メートル程で、それを支える様に太い支柱が立てられている。

 また、梯子を上りきった先には、人が立てる程のスペースが有り、その周囲には安全の為か金属製の柵が廻らされていた。そのスペースには柔らかな布が敷かれており、2つのスペース間を繋ぐように金属製のパイプが渡されている。そのパイプには、絶えず透き通った液体が送り出されており、それは日の光を受け妖しく輝いていた。

「対戦の舞台は、不安定な棒の上。一応、落ちた時用に下は柔らかなクッションを用意しております」
遠目では分かり難いものの、司会の言う通りステージ上には白くぶ厚いクッションが用意され、ダームはそれを間近で見ようと走り出す。

 彼は、ザウバーの近くまで行くと立ち止まり、白いクッションをまじまじと眺めた。間近に見るクッションの表面には光沢が有り、それはパイプから滴り落ちる液体を弾いている。

「ザウバー。なんか生臭くない? 何かこう……烏賊みたいな」
「俺じゃねえからな」
 そう話すザウバーの声は上ずっていた。ダームは、そんな彼の様子を不思議そうに見上げ、目を瞬かせながら首を傾けた。

「別に、ザウバーが臭いとか言ってないし……確かに、さっき烏賊を食べてはいたけど」
 それを聞いたザウバーは、ダームの視線を避ける様に空を仰いだ。

「落ちた時用といいましたが、落ちたら負けになりますので」
 司会がそう話すと、ライラやリリスは苦笑し、アイーシャは溜め息を吐きながら首を振った。

「ですが、落ちる落ちないという以前に、勝敗が決まる場合も有ります。というより、あの棒の上で勝敗をきめて頂くのが本来の戦い方です」
依然として終わりを見せない司会の話に、ルビアとルフィエは疲れた様子を見せ、長く息を吐きながら項垂れた。

「戦い方は2種類。選手の組み合わせによって、戦い方を変えます」
 その声を合図とするように、司会の元へは1人の男性が駆け寄り、彼女へ2つの物を手渡す。

 渡されたうちの1つは、女性の手に収まる程の銃で、もう1つは腕程の長さを持つ棒であった。また、その男性は白い風船を持っており、司会の横に立つとそれを胸の前へ動かす。それを横目で見た司会は右手で銃を掲げ、それから男性の胸元へと向けた。

「先ずは、こちら」
 そう言うと、司会は銃の引き金を引き、その銃口からは赤い液体が噴出される。その液体は男性が持つ風船を赤く染め、それを見た司会は参加者の方へ向き直った。

「対戦方法の一つは、いかに早く相手の胸元を撃ち抜くかです」
 そう説明すると、司会者は銃を胸の前へ持っていき、指先でその銃身を数回なぞる。

「先ほど示したように、これからは水溶性の液体が発射されます。また、射程距離は1メートル程で、当たっても痛くないように作られています」
 司会は、言いながら銃口を風船へ向け、再びその引き金をゆっくり引いた。すると、風船には再び液体が命中し、それはゆっくりと砂浜へ落下する。

「もう一つの戦い方はこちら」
 そう言うと、司会は左手に持った棒を掲げ、参加者の顔を軽く見る。棒の色は空より濃い青色で、その太さは片手で握るのに程良い太さであった。そして、彼女はその棒を振り上げると、赤く染まった風船へ勢い良く振り下ろす。すると、その風船は大きな音を出して割れ、周囲に赤い液体を飛び散らせた。

「風船を頭部と胸部に付け、いかに早く相手の風船を割るかによって勝敗を決めます」
司会は、青色の棒を胸の前へ移動させると、それを何度か振ってみせる。すると、その棒は釣り竿の様にしなり、周囲に柔らかな風を巻き起こした。

「どちらか一方の風船を割れば勝ちです。また、他の場所は狙っちゃ駄目です。当たると結構痛いですからね」
 そう話すと、司会は棒を勢い良く地面へ振りおろし、周囲に砂を飛散させた。そんな彼女の行動に、近くに居た者は思わず後退し目を細める。

「あと、どちらの戦いにも盾を使えます。攻撃を防げるものが無いと、つまらないですしね」
 言いながら、司会は服の中に手を入れ、そこから円形の盾を取り出した。その盾は、人の頭より一回り大きく、司会は銃と棒を投げ捨てると盾を左腕に装着する。

「これで銃撃を防ぐも良し、上手く棒をかわすも良し。使い方はお好きなようにどうぞ」
 そう言うと、司会は左腕を顔の前に動かし、装備した盾で顔を覆う

「では、試合を開始しましょう。どちらの武器を使うかは、2回戦で獲得したボールの数で決めます」
 そう言うと、司会は砂浜に落ちた銃と棒を拾い上げ、それらに付いた砂を掃いながら口を開く。

「対戦する2人が獲得したボールの合計数が奇数なら銃、偶数ならブレード」
 司会者は、手に持った武器を上方に掲げ、そのままの姿勢で参加者の顔を見る。

 数拍の後、彼女は掲げた手を下ろすと、その目線をステージ上へと移した。

「これで、一通りの説明は終わりました。選手の皆様は、速やかにステージの前まで移動して下さい」
 司会の声に、勝ち残った参加者らはステージの方へと進んでいき、ルビアとルフィエはゆっくりステージ横のテントへと向かって行った。参加者の移動と共に観客も移動を始め、ステージ前はにわかに活気付く。程無くして、参加者の全員はステージ前に集まり、それを確認した司会は大きく息を吸い込んだ。
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登場人物紹介

ダーム
 
大体元気なショタっ子。

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