水着は着る機会が少ない割に何故ああも種類が豊富なのか

文字数 2,546文字

「では、出場者の紹介です」
 司会者の女性は、左側へ勢い良く目線を動かす。

「エントリーナンバー1。昨年の女王、アイーシャ・デンドビューム!」
 司会者が高らかに言い放つと、ステージの右側からは、黒い水着を身に纏った女性が現れる。

 その水着は、隠すべき場所を最低限にしか覆っておらず、すらりと伸びた脚は太陽の光を浴びて輝いていた。また、肩まで伸びた金色の髪は、柔らかな風に身を任せて揺らいでいる。アイーシャが、堂々とした足取りでステージを歩くと、その豊かな胸は上下に大きく揺れた。そして、彼女はステージの左端まで行くと、わざとらしく腰を揺らして立ち止まる。

 アイーシャは、体の向きを変えてステージ前に集まった者達を見下ろすと、前屈みになり左手を振ってみせた。すると、それを見た男達は歓喜の声を上げ、楽しそうにアイーシャの名を呼ぶ者さえ現れる。

「エントリーナンバー2。ツヴァイ・フェランドラ!」
 司会者が、それらの声を遮る様に言い放つと、ステージには褐色の髪を頭の両側で纏めた少女が現れる。少女は、腰の周りや肩にフリルの付いた水着を着ており、薄い桃色をしたそれは、発育途上の少女には面白い程に似合っていた。

 ツヴァイは、小さな足音を立てながら歩くと、アイーシャの隣で立ち止まる。そして、少女はステージの下を見ると、両手を上に伸ばし元気良く左右に振って見せた。彼女の身長は低く、アイーシャと並ぶと、その小ささはより強調されてしまっている。

 ツヴァイに対する歓喜の声は、先ほどのアイーシャ程大きくは無かったが、可愛いと呟く声がちらほら有った。その後、順調に参加者の紹介は進んでいったが、10人目になってもベネットが登場することは無い。

 そのせいか、ダームは飽きたように空を見上げ、つまらなそうに大きな溜め息を吐いた。

「エントリーナンバー11。エルフェ・ルチカム!」
 司会者が力強く言い放つと、ステージの端からは腰まで伸びた長い銀髪と切れ長の瞳を持つ女性が現れる。彼女の体は参加者の中では一番細く、透き通る様に白い肌も相まって儚げな印象を醸し出していた。女性が着ている水着は白く、所々に水色をした花の模様が描かれている。

 また、腰の部分には襞の付いたスカートが巻かれており、その襞はエルフェが歩くたびに小さく揺れた。彼女は、暫く歩いてから立ち止まると、ステージ前に向き直って微笑んだ。そして、エルフェはスカートの両端を掴むと、それを軽く持ち上げながら頭を下げる。

 すると、ステージ前からは感嘆の声が上がり、綺麗だと声を漏らす女性までもが居た。

「エントリーナンバー12。ルフィエ・バルディア!」
 司会者の紹介が終わるや否や、ステージの右側からは飛び跳ねる様に参加者が登場する。
 ルフィエの肌はエルフェと対照的に黒く、黒い髪は暑さを軽減する為か短く切り揃えられていた。

 その女性は、黄色い花の絵をふんだんに使用した水着を身につけており、その模様は夏の日差しの下では眩しい程である。彼女は、エルフェの隣で立ち止まると、軽やかに回転をして観客を見下ろした。それを見た観客は、呆気にとられた様に口を開き、ぼんやりと彼女の姿を見上げている。

「エントリーナンバー13。ベネット・ハイリヒカイト!」
 ダームは、仲間の名を聞くなり目を輝かせ、ステージの端を見つめる。すると、ステージの右端からは空色の水着を纏ったベネットが現れ、その姿を見たダームは楽しそうな笑顔を浮かべた。

 彼女の髪は、後頭部で団子状に纏められ、その腰には柔らかなパレオが巻かれている。パレオの色は白く、水着の色と合わせると、まるで静かに波打つ海のようでもあった。また、ベネットはこういった格好に慣れていないのか、恥ずかしそうに胸元を隠しながら歩いている。観客の中には、その姿勢に対して不満を漏らす者も居たが、その不満の声は温かな声援によってかき消されている。

 ベネットは、ルフィエの隣まで進むと、観客の居る方へ向き直り仲間の姿を探した。彼女の気持ちを知ってか知らずか、ダームはベネットを応援するように手を振り、明るい笑顔を浮かべる。

 すると、少年の笑顔に気付いたベネットは安心したように顔を綻ばせ、そっとダームに手を振り返した。そして、手を振ることによって隠されていた胸元は露わになり、先ほど不満を漏らしていた者は打って変わって感嘆の声を漏らした。

「さて、これでコンテストの出場者が出揃いました」
 司会者は、観客の注意を引くような大声で言うと、軽くステージ下を見回した。

「コンテストの第一回戦は早食い対決。夏らしくアイスの早食いで戦って頂きます」
 女性が戦い方について説明すると、ステージの両側からは人の頭部程の大きさを持つ容器を抱えた者達が現れる。容器は金属で作られており、その周囲には厚めの布が巻き付けられていた。その容器は参加者の足元に一つずつ置かれていき、全参加者に行き渡ったところでそれらを配っていた者達はステージから下りていく。

「皆様の前に置かれたのは5本のアイスが入った容器。味の飽きが来ない様、それぞれ違う味になっております」
 そう話すと、司会者は目線を変え容器の一つを指し示す。

「先ずは、その場で座って開始の合図を待って頂きます。そして、食べ終わり次第、立ちあがって空になった容器を掲げて下さい。次の戦いに進めるのは10名です」
 司会者は、言い終わるなり参加者の方を見やり、それに気付いた女性達は次々に腰を下ろしていった。
 殆どの女性は足を揃えて座っていたが、中には容器を両足で挟むようにして座るものや胡坐をかく者までも居た。 そして、参加者の全員が座った後、司会者の女性は左手を大きく振り上げ口を開く。
「では、カウントダウンを開始します。3……2……」
 司会者がカウントを始めると、参加者達は容器を見つめ、そのまま開始の合図を待った。
「1……スタート!」
 司会者が言い放つと、参加者達は一斉に容器の中へ手を伸ばし、それぞれに棒のついたアイスを取り出した。アイスの太さは、親指と人差し指を合わせて作った輪程のもので、長さは持ち手を合わせて女性の足幅程度である。また、アイスの色は白や橙などが有り、ひんやりとした空気を周囲に放出していた。
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登場人物紹介

ダーム
 
大体元気なショタっ子。

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