それなりの力で叩きつけろ
文字数 1,070文字
「あいつ、コンテスト終了後にまた来るって言ってたのに」
「私達が居ると近付きにくいのかも知れないな。ダーム、後はザウバーに任せてホテルに向かおう」
そう言うなり、ベネットはザウバーの元を去ろうとする。
「俺を置いていく気か?」
「どの道、宿泊券は2人分だ」
冷静に返すと、ベネットは無機質な笑みを浮かべる。ザウバーは、そんなベネットの表情に絶句し、苦し紛れに笑みを浮かべた。
「俺は何処に泊まればいいんだよ」
「野宿?」
「お前なあ」
ダームの声にザウバーは脱力し、虚しそうに大きな溜め息を吐いた。
「とにかく、疑いを晴らしたければ頑張ることだな」
冷たく言い放つと、ベネットは彼の元から離れていく。ダームは彼女とザウバーの顔を交互に見てから、ベネットの後を追っていった。
ザウバーは仲間の背中を見送り、大きな溜め息を吐く。それから、彼は気怠るそうに周囲を見回すと、解体中のステージに向かっていった。しかし、その周囲にはコンテスト関係者と思しき者しかおらず、ザウバーは肩を落とす。
彼は、暫くステージ前を歩き回り、ぼんやりと海を眺めた。ザウバーの額にはうっすらと汗が浮かび、それが彼の疲労を表しているようでもあった。
「あれ? もしかして写真を買うために戻ってきたくち?」
ザウバーの耳に、男の声が届いた。その声を聞いたザウバーは眉間に皺を寄せながら振り返り、話しかけてきた男を睨みつける。
「お前の、せいで、俺は、なあ!」
その声に男は驚き、目を丸くしながら後退する。しかし、男性を捕らえるように砂浜から青々とした蔓が現れ、彼の脚をしっかりと捕らえた。
蔓は段々と伸びていき、男性の胸や両腕をも捕らえていく。蔓は、男性の首へ巻きついたところで成長を止め、その先端をゆっくりと回転させている。その巻き付き方はしっかりとしており、男性は殆ど体を動かせないまま目を白黒させた。
「これは返す。二度と、こんな商売しようとすんなよ!」
そう言い放つと、ザウバーは手に持っていた紙片を男の顔に叩きつけた。すると、首のところで止まっていた蔓は再び成長を始め、その紙が落ちぬよう男の顔に巻きついていく。
男性は、その紙を剥がそうと顔を振るうが、彼がそうすればそうするほど、蔓の締め付けはきつくなっていった。その現象は体の方も同様で、男性は暫くもがいた後に動くことを止める。その異様とも言える光景に近くの者は目をとめ、何事かと2人の様子を眺めていた。ザウバーは、その視線を避けるように歩き始め、仲間が立ち去った方へ進んでいく。
こうして、夏のイベントは終わったのだった。
―完―
「私達が居ると近付きにくいのかも知れないな。ダーム、後はザウバーに任せてホテルに向かおう」
そう言うなり、ベネットはザウバーの元を去ろうとする。
「俺を置いていく気か?」
「どの道、宿泊券は2人分だ」
冷静に返すと、ベネットは無機質な笑みを浮かべる。ザウバーは、そんなベネットの表情に絶句し、苦し紛れに笑みを浮かべた。
「俺は何処に泊まればいいんだよ」
「野宿?」
「お前なあ」
ダームの声にザウバーは脱力し、虚しそうに大きな溜め息を吐いた。
「とにかく、疑いを晴らしたければ頑張ることだな」
冷たく言い放つと、ベネットは彼の元から離れていく。ダームは彼女とザウバーの顔を交互に見てから、ベネットの後を追っていった。
ザウバーは仲間の背中を見送り、大きな溜め息を吐く。それから、彼は気怠るそうに周囲を見回すと、解体中のステージに向かっていった。しかし、その周囲にはコンテスト関係者と思しき者しかおらず、ザウバーは肩を落とす。
彼は、暫くステージ前を歩き回り、ぼんやりと海を眺めた。ザウバーの額にはうっすらと汗が浮かび、それが彼の疲労を表しているようでもあった。
「あれ? もしかして写真を買うために戻ってきたくち?」
ザウバーの耳に、男の声が届いた。その声を聞いたザウバーは眉間に皺を寄せながら振り返り、話しかけてきた男を睨みつける。
「お前の、せいで、俺は、なあ!」
その声に男は驚き、目を丸くしながら後退する。しかし、男性を捕らえるように砂浜から青々とした蔓が現れ、彼の脚をしっかりと捕らえた。
蔓は段々と伸びていき、男性の胸や両腕をも捕らえていく。蔓は、男性の首へ巻きついたところで成長を止め、その先端をゆっくりと回転させている。その巻き付き方はしっかりとしており、男性は殆ど体を動かせないまま目を白黒させた。
「これは返す。二度と、こんな商売しようとすんなよ!」
そう言い放つと、ザウバーは手に持っていた紙片を男の顔に叩きつけた。すると、首のところで止まっていた蔓は再び成長を始め、その紙が落ちぬよう男の顔に巻きついていく。
男性は、その紙を剥がそうと顔を振るうが、彼がそうすればそうするほど、蔓の締め付けはきつくなっていった。その現象は体の方も同様で、男性は暫くもがいた後に動くことを止める。その異様とも言える光景に近くの者は目をとめ、何事かと2人の様子を眺めていた。ザウバーは、その視線を避けるように歩き始め、仲間が立ち去った方へ進んでいく。
こうして、夏のイベントは終わったのだった。
―完―