人だかりは好奇心の塊かも知れない

文字数 1,416文字

「コンテスト参加希望ですか?」
 女性はベネットの目を見つめ、返答を待った。
 ベネットは小さく頷き、女性の目を見つめ返す。

「かしこまりました」
 女性は机の上に一枚の紙と筆記具を乗せる。

「直ぐに大会が始まりますので、まずはこちらに記名してください」
 女性は紙面の下方を指し示し、ベネットへ記名するよう促す。促されるままにベネットが記名を終えると、女性は紙を持ち上げて書き込まれた文字を確認し、柔らかな笑顔を浮かべた。

「ベネット・ハイリヒカイトさん……ですね? それでは、ご案内いたします」
 その女性は、参加者の名前を確認するように言うと、背後に有るテントの入口を静かに開ける。それを見たベネットは、ダームとザウバーに目配せをし、ゆっくりとテントの中へ入って行った。

 ダームとザウバーは笑顔で彼女を見送り、ステージの前へ移動を始める。

ベネットと別れた後、ダームとザウバーは大会を良く見る為、ステージ前の中央付近に陣取った。その時、既に数人の人々が大会を見る為に集まっており、興味深そうにそのステージを見上げている。二人が、それらの人々へつられる様にステージを見上げると、その上部には出場者を照らすであろうライトが十機程付いていた。

 また、この為に作られたのであろうステージは、吸水性を考慮したのか木材で作られた床の上に厚手の布が貼られている。ステージの奥は、金属で組まれた基礎の上に光沢のある布がかけられており、その白い布は海風を受け微かに揺れていた。

「改めて見てみると、結構大きいね」
ダームは、ふと言葉を漏らすと、目線を動かしザウバーの顔を見る。

「それだけ参加者が居るってことだろ」
 簡単に言葉を返すと、ザウバーはステージ横に有るテントを眺めた。

 すると、既に大会の参加受付は終了したのか、テント前に有った机は消え、人通りも少ない。
 そして、二人が目線をステージへ戻した時、ステージ周辺には五十以上もの人々が集まって来ていた。

 集まった者達の殆どは男性で、見物客を相手に稼ごうとしたのか物売りの姿も有った。

 次第にステージ前は騒がしくなっていき、それに気付いた人々は何が起きるか確かめようと集まってくる。集まった人々はそれぞれに雑談を始め、その声は次第に大きくなっていった。

「さーあ、今年もやってきました水着女王コンテスト!」
 それらの声をかき消すように高い声が響き渡り、ステージ上には一人の女性が現れる。その女性は、薄手の衣服を身につけており、その服の色は晴れた青空のように青い。また、暑さをしのぐ為か、はたまた注目を集める為なのか、彼女の来ているスカートの丈は短く、角度によってはその中が見えてしまう程である。そのせいか、ステージ前に集まった男の幾らかは、本能の赴くままステージに近寄り首を様々な方向に傾けた。

 女性は、それらの目線に気付いていないのか、ステージの中央に立つと華奢な足を肩幅に広げ、左手を大きく振り上げる。その左脇からは柔らかな膨らみが覗く。

「今年も素敵な方々が沢山、参加されています」
 女性が明るい声で言うと、ステージ前に集まった者達からは歓声が上がり大きく体を動かす者も現れた。

 すると、それらの声に反応してか、ステージ前には段々と人々が集まっていく。

「今年集まりましたのは、13人の乙女達! ここから最終的に一人の女王を決定いたします!」
 歓声は更に大きくなり、その勢いのままに観客はステージの方へ体を寄せた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ダーム
 
大体元気なショタっ子。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み