子供だった頃の守り人・終
文字数 1,792文字
「アーク、口は固い方ですか? それと、あの少女の運命を共に背負う気持ちはありますか?」
突然の言葉に何も返せる訳もなく。
「いきなり答えを出せとは言いません。ゆっくり御茶でも飲みながら話しましょう」
私の動揺に気付いたのか、司祭様はソファーの在る場所に案内してくれて。私に座るように言いました。
「では、お茶が入るまで気持ちを整理していて下さいね。ああ、くれぐれも外には行かないように」
言って、司祭様は私の前から消えました。それにしても、運命を共に背負うとは一体どういう意味でしょうか。少女に起きたことが普通では無いことは感じていましたが……やはり、ただ事では無いのでしょうか?
そうであれば、口外する気は有りませんし、出来ることならサポートだってしたい。ですが、それが私に務まるかと言えば分からなくて。考えが纏らない内に司祭様は戻ってきて。そして、私の前にカップを一つ。
「焦らなくても大丈夫ですよ。直ぐに決められる問題では無いですし」
そう言って、司祭様は笑って。
「まあ、先ずは少しだけ御話をしましょうか」
それに私が頷けば「街の結界が消えたんですよ、今日」と。
そこまでの説明で予想が付くのは、魔物が現れたのは結界が消えたせい。
「それで、新たに結界を張らなければならなかったのですが……その為の儀式場が先程の場所でして」
そこまで伝えたところで、司祭様は頭を抱えて。
「本来、その儀式は予め決められた方が行うべきでして」
それから司祭様が話してくれたことは、
その結界は、儀式を行った者が亡くなるまで張られるのが普通。 しかし、亡くなった瞬間に結界は消え、術者が亡くなるまでは他者が新たに張ることは出来ない。 それ故、常に次に結界を張るべき候補が挙げられており、今回もそうなるべきであった。
しかし、そうするよりも前に結界は張られ、これは前例が無い。
そして、前例が無い為に、結界の強度が不十分であれば、相応の決断が下される可能性もある。
もし、そうでなくとも、その事実を知った者から、命を狙われる可能性は低くは無い。
そして、結界を張ったのが少女であることが知れれば、その若さ故に言われの無い誹謗中傷もあること。
どれもこれも理解が難しくて。司祭様にも余裕は無かったようで。
「少女を守って頂けますか」と。
しかし、直ぐに返事は出来なくて。そうしているうちに司祭様は一言。
「身辺警護は信頼のおける警備兵に任せます。アークは、精神面で守ってあげて下さい。貴方なら、少女も警戒しませんし」
守るって、そういうことですか? それなら、私にも出来なくは無いと思います。闘うとなると凄く自信が無いですが。そう返せば、
「良かった。もし断られたら、貴方の記憶を消すことも考えていたので」
いきなり物騒な話です。その不安が顔に出たのか、司祭様は微笑みながら言葉を加えて。
「いえ、結界を張る術者を知る人間が増えるのは、街の安全に関わるので。だってそうでしょう? この街を嫌いな人がそれを知ってしまったら、結界を壊して街を滅茶苦茶にしようと考えかねませんから」
確かに。でも、わざわざ記憶を消すなんて怖いです。
「だからこそ、教会関係者の中でも一部の者しか知らないのですよ、この事実は。儀式場も教会内に在りますし、行くまでの過程を知る者も少ないですから、今まで漏れることなど無かったと聞いています。ああ、因みに私は記憶を操作する術など使えないので悪しからず」
もう何が何だか。と、言いますか、嘘だったんですかね記憶の下りは。となると、他のことも信憑性が疑わしく……って、ああ、もう。
その後、私は「少女を守る」という願いを受け入れました。正直なところ自信は無かったのですが、結果的には少女が聖女として成長するまで見守ることが出来ました。それが、私の支えが有ったかどうかは定かでは無いですが……話すことすら出来なかった少女が皆に尊ばれる存在になったのは私としては嬉しい限りです。
小さな頃から知っていたせいか、頼ってくれないのは寂しくも有ります。それでも、強く生きてくれることは嬉しいのです。あの子が街を離れると聞いた時は悲しくもありましたが、帰る場所が有るからこそだと聞いて嬉しくもありました。そして、何としてでも街を守ろうと思うようになったのです。
――あの方の旅が終わる
何時かまで、
私は――
突然の言葉に何も返せる訳もなく。
「いきなり答えを出せとは言いません。ゆっくり御茶でも飲みながら話しましょう」
私の動揺に気付いたのか、司祭様はソファーの在る場所に案内してくれて。私に座るように言いました。
「では、お茶が入るまで気持ちを整理していて下さいね。ああ、くれぐれも外には行かないように」
言って、司祭様は私の前から消えました。それにしても、運命を共に背負うとは一体どういう意味でしょうか。少女に起きたことが普通では無いことは感じていましたが……やはり、ただ事では無いのでしょうか?
そうであれば、口外する気は有りませんし、出来ることならサポートだってしたい。ですが、それが私に務まるかと言えば分からなくて。考えが纏らない内に司祭様は戻ってきて。そして、私の前にカップを一つ。
「焦らなくても大丈夫ですよ。直ぐに決められる問題では無いですし」
そう言って、司祭様は笑って。
「まあ、先ずは少しだけ御話をしましょうか」
それに私が頷けば「街の結界が消えたんですよ、今日」と。
そこまでの説明で予想が付くのは、魔物が現れたのは結界が消えたせい。
「それで、新たに結界を張らなければならなかったのですが……その為の儀式場が先程の場所でして」
そこまで伝えたところで、司祭様は頭を抱えて。
「本来、その儀式は予め決められた方が行うべきでして」
それから司祭様が話してくれたことは、
その結界は、儀式を行った者が亡くなるまで張られるのが普通。 しかし、亡くなった瞬間に結界は消え、術者が亡くなるまでは他者が新たに張ることは出来ない。 それ故、常に次に結界を張るべき候補が挙げられており、今回もそうなるべきであった。
しかし、そうするよりも前に結界は張られ、これは前例が無い。
そして、前例が無い為に、結界の強度が不十分であれば、相応の決断が下される可能性もある。
もし、そうでなくとも、その事実を知った者から、命を狙われる可能性は低くは無い。
そして、結界を張ったのが少女であることが知れれば、その若さ故に言われの無い誹謗中傷もあること。
どれもこれも理解が難しくて。司祭様にも余裕は無かったようで。
「少女を守って頂けますか」と。
しかし、直ぐに返事は出来なくて。そうしているうちに司祭様は一言。
「身辺警護は信頼のおける警備兵に任せます。アークは、精神面で守ってあげて下さい。貴方なら、少女も警戒しませんし」
守るって、そういうことですか? それなら、私にも出来なくは無いと思います。闘うとなると凄く自信が無いですが。そう返せば、
「良かった。もし断られたら、貴方の記憶を消すことも考えていたので」
いきなり物騒な話です。その不安が顔に出たのか、司祭様は微笑みながら言葉を加えて。
「いえ、結界を張る術者を知る人間が増えるのは、街の安全に関わるので。だってそうでしょう? この街を嫌いな人がそれを知ってしまったら、結界を壊して街を滅茶苦茶にしようと考えかねませんから」
確かに。でも、わざわざ記憶を消すなんて怖いです。
「だからこそ、教会関係者の中でも一部の者しか知らないのですよ、この事実は。儀式場も教会内に在りますし、行くまでの過程を知る者も少ないですから、今まで漏れることなど無かったと聞いています。ああ、因みに私は記憶を操作する術など使えないので悪しからず」
もう何が何だか。と、言いますか、嘘だったんですかね記憶の下りは。となると、他のことも信憑性が疑わしく……って、ああ、もう。
その後、私は「少女を守る」という願いを受け入れました。正直なところ自信は無かったのですが、結果的には少女が聖女として成長するまで見守ることが出来ました。それが、私の支えが有ったかどうかは定かでは無いですが……話すことすら出来なかった少女が皆に尊ばれる存在になったのは私としては嬉しい限りです。
小さな頃から知っていたせいか、頼ってくれないのは寂しくも有ります。それでも、強く生きてくれることは嬉しいのです。あの子が街を離れると聞いた時は悲しくもありましたが、帰る場所が有るからこそだと聞いて嬉しくもありました。そして、何としてでも街を守ろうと思うようになったのです。
――あの方の旅が終わる
何時かまで、
私は――