カオスさは更に増します

文字数 1,480文字

 ここで、ドロワットが白目を剥き、後方に倒れ込んだ。この為、スタッフがドロワットの近くに駆け寄り、名前を呼んだ。しかし、ドロワットが反応を示すことは無く、スタッフは頭の上で腕を交差させた。
「おおっと! ここでドロワットが脱落だ! 残るは七人。最下位以外は次の試合に出られるぞ!」
 ステージには、担架が運び込まれ、既に居たスタッフと二人がかりでドロワットはステージから消え去った。ここで、出場者達は困惑を見せるが、セストだけはがむしゃらに食べ物を口に押し込んでいた。だが、セストは咀嚼を止めて口元を押さえると、盛大に胃の中身を吐き出した。
 セストの吐く勢いは止まらず、涙目になりながら残りの料理や周囲を汚した。この為、司会はセストに近付き、肩を叩いた。
「戻したもの、食べる勇気はあるか?」
 司会の問にセストは首を横に振った。この為、セストはリタイア扱いとなり、司会は観客に向き直る。
「セストは続行不可能! なので、もう他の野郎は皆勝ち抜きだ!」
 意外な勝負結果に、観客は小声で何かを話し始めた。しかし、それを遮る様に、司会は声を上げる。
「残りは持ち帰って食え! 特別な理由が無い限り、フードロスは許さねえぞ!」
 司会が話している間に、控えていたスタッフがセスト以外の料理を回収した。また、セスト周辺の掃除が開始され、ステージはすっきりとしていく。
「勝ち残ったのは、アンドリュー、ドィルク、ドロワット、サンク、シルヴァン、ヨーゼフ、ノーマン、ザウバーの八人! 次の戦いは……花火だ!」
 その宣言に観客はざわついた。太陽はさんさんと海辺を照らし、花火をする時間には到底思えない。
「用意したのは、特製ロケット花火! 鍛え上げた動体視力と運をもって、落下する三回戦出場権を文字通り掴み取れ!」
 それを聞いた観客は納得した様子で落ち着き、スタッフは四つのロケット花火を準備した。その準備が終わったところで司会はステージの端により、そこで口を開く。
「細かい説明は不要! ロケット花火に引火! 空に向かうロケット! 落ちてくる三回戦出場権! 掴み取れ! 以上!」
 司会が言い終わると同時に、ロケット花火にはひがつけられた。そうして、十秒もしない内に戦いは始まり、参加者達は空を見上げた。
 夏の空は明るく、参加者は皆目を細めた。また、観客は空を見上げても直ぐに目線をステージに戻し、結果だけを見ようとした。
 次第に空からは小さなパラシュートの付いた三回戦出場権と書かれたプレートが振ってきた。参加者は、自分の立ち位置から一番近いパラシュートに狙いを定め、集中する。
 ところが、強風が吹き抜け、パラシュートは風で煽られた。この時、シルヴァンは慌てて移動をしようとして転び、結果的に出遅れた。
 その一方、ノーマンは身長を利用して軽々とパラシュートを掴み取った。また、前回優勝者のアンドリューも、並外れた跳躍力でパラシュートを掴む。
 その後、ザウバーはステージの端に向かい過ぎたパラシュートを誰と取り合うことなくキャッチする。そして、落下してしまったパラシュートをヨーゼフが滑り込む様にして勝ち取った。
「ここで試合終了! 一部空中では掴み取れ無かったが、まあ良い!」
 司会は落下したパラシュートに集まった参加者を見ながら言った。また、シルヴァンは恥ずかしそうに立ち上がり、目線を観客から逸らしている。
「三回戦出場者は、アンドリューとヨーゼフ、ノーマンにザウバーだ! 負けた野郎はさっさと帰れ!」
 司会の言葉に、敗退者はステージから足早に去った。一方で、司会は楽しそうな笑顔を浮かべる。
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登場人物紹介

ダーム
 
大体元気なショタっ子。

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