第30話

文字数 855文字

前へと向き直り、塔をのぼっていこうとする。
どうやらこの塔はエレベーター式のようで、扉の目の前には大きなエレベーターが広がっていた。
「これで……何階に行けばいいのかな?」
そう千多喜が尋ねるも、わかる人はいない。
とにかく乗ってみよう、と5人一斉に乗り込む。すると――
ブー!!!
けたたましくブザー音が鳴り響く。どうやら定員オーバーらしい。こんなにも大きいエレベーターなのに、5人すらも乗れないのはどういう事だ、と一同疑問に思ったところで、俺たちは後で乗るよ。と玲亜二と千多喜がエレベーターを降りる。
「それじゃあ、エレベーターにも何か仕掛けがあるかもしれないから……気をつけてね。俺たちもすぐ後ので向かうから。」
一瞬の別れを告げ、2人は貴祢たち3人を見送る。

「……なあ、最近お前変だぞ?」
玲亜二が話し始める。
「……そんなつもりは無いんだけど……なんだろう。昔の夢を見てから調子が悪いんだ。」
と語り出す千多喜。どうやら思い当たることはあったらしい。
「そっか。お前もお前で辛いもんな。俺に出来ることがあったら言ってくれよ。」
玲亜二は千多喜の過去を知っている。だからこそ力になりたいのだ。
そんなことを話しているうちに、エレベーターが到着する。2人は無言で乗り込み、なにか鳴っているアナウンスに耳を澄ます。
「このエレベーターは 5階 ゲーム広場行きです」
ウィーン……
扉がゆっくりと閉じる。
ゲーム広場ってなんだ?と玲亜二は呟く。
とにかく着いたら分かるよ。たぶんね。と千多喜はそれに応える。
あっという間に5階に着き、扉がまた開く。
そこに広がっていたのは、何も無い、殺風景な空間だった。
「おーい、誰かいるのか?」
玲亜二は声をとばす。しかし返事は無い。この空間で一体何をしなければいけないのか。いや、何をすればこの塔から帰れるのか。そして魂を成仏させられるのか。
それが知りたいのに、答えてくれる人は誰もいない。
呆然と2人で立ち尽くしていると――

「おっと……すみません。4階のほうが手こずってしまいまして。」

空間の奥のほうに男が現れる。
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