第8話

文字数 1,443文字

「っしゃあ!俺っちの薬、喰らえ!」
そう叫びながら光紘はどんどん兵士に薬を振りまいていく。すると兵士の装甲がだんだんと溶け始め、ものの10秒で完全に兵士の装甲は液体になった。
「貴祢、六花ちゃん、いけ!」
「まかせて。」
お得意の槍と扇でどんどん敵を薙ぎ倒していく貴祢と六花。
「僕も居るからね。」
そう言った御世汰は槍と扇に広範囲に爆発させる魔法をかけた。貴祢が槍を敵に突き刺したところで爆発が起こり、近くにいた敵も皆砕け散る。
作戦は大成功。
街に蔓延っていた兵士たちの数はすっかり減り、街を歩けるようになったのだ。
「君たちかい!?兵士を倒したっていうのは!」
家の中から街の人が出てくる。もちろん、その町の人も体は透明だ。
「はい、そうです!」
「よくやってくれたよ……あいつら、敵味方の区別がつかなくて、俺たちにも攻撃を加えてくるんだ。」
「そんなことがあったんですね……」
街の人は話を続ける。
「でも、ここまで兵士の数が減ったとなったら、あいつも黙ってないかもな……兵士の親玉、この街を乗っ取ってる怪物も。」
「やっぱり……そうですよね。」
兵士が大幅に減ったことに怪物が気づいたら、どうなることか。暴れ回られるかもしれない。
「けど、あの兵士たちを倒せる君たちなら……あの怪物も倒せるかもな。」
街の人はそう言ってくれる。
「ありがとうございます。……ところで、その怪物って、何処にいるんですか?」
貴祢が問う。
「あぁ、怪物なら――この街の1番奥の、1番大きい家に住み着いてるよ。」
有力な情報を得ることが出来た。
「ありがとうございます。色々教えてくださって。」
「こんなのいいんだよ。とにかく、君たちも体を大事にするんだよ。この街で致命傷を負ったら……」
「何かあるんですか?」
「……いや、なんでもない。あまり怖がらせることを言うような気は無いからね。」
街の人は話を辞めてしまった。正直少し気になるところではあったが、言い難いことならば仕方ないだろう。と自分に言い聞かせる貴祢。
「改めて……色々教えて頂きありがとうございました。」
改めてお礼を言うと、街の人は家に戻ってしまった。
「さて…どうする?」
「怪物を倒さないことには……この街の異変は解決しないよね。」
「でも……俺っちたちにできっかなあ……」
弱気になる光紘に、御世汰が喝をいれる。
「そんなに弱気にならない。今回だって、作戦をちゃんと立てたら前回よりも楽に勝てたでしょ。結局そういうことの積み重ねなんだよ。」
「……そうだな!できる!俺っちたちなら!できる!」
「ふふっ……」
急にやる気に満ち溢れた顔をする光紘がなんだか面白くて、御世汰は笑みをこぼした。


「……ここか」
お爺さんの家でまた1泊させてもらった貴祢たちは、街の最深部へと向かう。
「でけー家だな」
そう。この街を乗っ取っている怪物の住処に来たのだ。
「やばい、アタシ、緊張してきたかも……」
「扉、開けるよ。」
そう言って家の扉を開けようとする貴祢。
「なんだお前ら。人の家の前でぺちゃくちゃ喋りやがって――」
「!?」
脳に直接響いてくるようなドスの効いた声が聞こえてくる。
「怪物の声だ!戦いの準備に入れ!」
御世汰が叫ぶ。
「戦いだと……?なんだそうか。俺を倒しに来たのか。相手してやろうじゃないか。いいぞ。中に入ってこい。」
家の扉を開き、中へと入る貴祢たち。
そこで見たのは、不思議な姿をした怪物だった。
目は左右非対称なところにあり、顔から生えている腕は三本ある。その手には鋭い爪があり、いかにも強そうな見た目をしている。
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