第25話
文字数 1,135文字
「アタシは出かけてくるから、こいつらのこと見ておいてね。」
俺は母親に全てを奪われた。
いわゆる「毒親」ってやつか。
物事つく前に両親は男女関係のトラブルで離婚した。
しかしある日、その母親が後の父親と再婚した。
俺には4歳と2歳の妹ができた。
それからしばらくの間は楽しく過ごしていた。妹の成長を感じる幸せ、初めて「家族」の温かさを知ることが出来た。妹のことはもちろん大切だったし、世話も自分ができる範囲内でたくさんやった。可愛い妹の面倒を見るのも幸せのひとつだった。
いつからだろう。その幸せにヒビが入ってしまったのは。
何がきっかけかは知らないが、母親が急に知らない男を家に連れ込むようになった。
俺でも分かった。これはやってはいけないことだと。不倫だ。と。
それだけならば良かった。いや、良くは無いのだが。それだけならばまだ救いようはあった。
父親はそんな母親に痺れを切らし家から出ていってしまった。この家に何も残さずに。
それから母親は男遊びがもっと激しくなった。家に男を連れてくるだけでなく、数日間何も言わずに家を空けるときだってあった。
そして最悪の知らせ。
母親が仕事を辞めたらしい。
父親が出ていってしまったからもっと稼ぎの良い職業に転職するために仕事を辞めたのだ、と信じていた。
しかしそんな理想はすぐに打ち砕かれる。
気づけば俺の周りには何も残っていなかった。
部活も辞め、ただ毎日妹たちの世話をする日々。
朝は誰よりも早く起き、妹たちと自分の分の弁当、そして朝食を作る。学校から帰ってきたら夕飯を作り、洗濯物を片付ける。掃除もする。それから課題をこなすとなると、寝ることが出来るのはいつも外が明るくなってきてからだった。
ある日のこと。
母親に「今日から妹たちを連れて実家に戻る」と言われたのだ。そんなことを言われてほっとしてしまった。やっと自分の時間が作れると。大好きだった妹の世話も、気づけば自分の負担にしかなっていなかったのだ。
だから、快くその提案を受け入れた。
後で何が起こるかも知らずに。
ガチャ、と扉の開く音がする。
「母さん……!」
玄関へ駆け出す。母親に対しては既に情は無かったが、久しぶりに妹の姿を見ることができるとワクワクしていた気持ちがあった。
しかし、そこには妹たちの姿はなかった。
「か、母さん。1人だけでどうしたの……?」
「ああ。あいつらなら死んだ……アタシが殺した。」
ガタンッ!
その場に膝から崩れ落ちる。
(死んだ……?殺した……?)
何かの間違いだ、そんなはずはないと母親を問いただす。
しかし返ってくる言葉は変わらなかった。
正真正銘、俺は何もかもを失ってしまった。
部活の仲間も、学校の友達も、1番だった妹たちも。
ならば、もう――
自分の首に縄を巻き付ける。
逝ってしまおう――
俺は母親に全てを奪われた。
いわゆる「毒親」ってやつか。
物事つく前に両親は男女関係のトラブルで離婚した。
しかしある日、その母親が後の父親と再婚した。
俺には4歳と2歳の妹ができた。
それからしばらくの間は楽しく過ごしていた。妹の成長を感じる幸せ、初めて「家族」の温かさを知ることが出来た。妹のことはもちろん大切だったし、世話も自分ができる範囲内でたくさんやった。可愛い妹の面倒を見るのも幸せのひとつだった。
いつからだろう。その幸せにヒビが入ってしまったのは。
何がきっかけかは知らないが、母親が急に知らない男を家に連れ込むようになった。
俺でも分かった。これはやってはいけないことだと。不倫だ。と。
それだけならば良かった。いや、良くは無いのだが。それだけならばまだ救いようはあった。
父親はそんな母親に痺れを切らし家から出ていってしまった。この家に何も残さずに。
それから母親は男遊びがもっと激しくなった。家に男を連れてくるだけでなく、数日間何も言わずに家を空けるときだってあった。
そして最悪の知らせ。
母親が仕事を辞めたらしい。
父親が出ていってしまったからもっと稼ぎの良い職業に転職するために仕事を辞めたのだ、と信じていた。
しかしそんな理想はすぐに打ち砕かれる。
気づけば俺の周りには何も残っていなかった。
部活も辞め、ただ毎日妹たちの世話をする日々。
朝は誰よりも早く起き、妹たちと自分の分の弁当、そして朝食を作る。学校から帰ってきたら夕飯を作り、洗濯物を片付ける。掃除もする。それから課題をこなすとなると、寝ることが出来るのはいつも外が明るくなってきてからだった。
ある日のこと。
母親に「今日から妹たちを連れて実家に戻る」と言われたのだ。そんなことを言われてほっとしてしまった。やっと自分の時間が作れると。大好きだった妹の世話も、気づけば自分の負担にしかなっていなかったのだ。
だから、快くその提案を受け入れた。
後で何が起こるかも知らずに。
ガチャ、と扉の開く音がする。
「母さん……!」
玄関へ駆け出す。母親に対しては既に情は無かったが、久しぶりに妹の姿を見ることができるとワクワクしていた気持ちがあった。
しかし、そこには妹たちの姿はなかった。
「か、母さん。1人だけでどうしたの……?」
「ああ。あいつらなら死んだ……アタシが殺した。」
ガタンッ!
その場に膝から崩れ落ちる。
(死んだ……?殺した……?)
何かの間違いだ、そんなはずはないと母親を問いただす。
しかし返ってくる言葉は変わらなかった。
正真正銘、俺は何もかもを失ってしまった。
部活の仲間も、学校の友達も、1番だった妹たちも。
ならば、もう――
自分の首に縄を巻き付ける。
逝ってしまおう――
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