第22話

文字数 1,212文字

それから二人は長い間かなり足場の悪い道を歩かされた。李織も雅久も戦う上での筋力や体力はあるが、それでも疲労が蓄積されるほど歩いた。ゴロゴロとした石が進行を阻害する。

「……聖、まだ着かないのか?」
雅久の声からはすでに元気が消えていた。
「もうすぐ着くから。あとちょっと、頑張って。」

すると目の前には大きな神殿らしきものが見えてきた。
もう少し近づいてみる。
するとそこには人間の身長をゆうに超えるほどの影が見えた。恐らく怪物だろう。

「そういえば……本拠地に三人なんかで来て良かったんですかね?」
今更な質問を李織が投げかける。
「……確かにな。ここまで来て言うのもどうかと思うが――聖はどう思うんだ?」
雅久が神妙な顔つきになって問う。聖の様子をみるため後ろを振り向くと――

「……っはは、ははははは!!」
そこには二人を嘲るかのように大きく笑う聖がいた。
(……まさか!?)
李織はぱっと前に顔を戻す。するとそこには大量の敵がぞろぞろとこっちに向かってくる様子が目に入った。
やはりさっき感じた不信感は本物だったのか、と一瞬にして状況を理解する。
しかし雅久は未だ状況を把握できずにいた。
「……しょ、聖、どうしたんだ?敵が、集まってきたぞ?」
混乱して聖に説明を求める。
「……お前らはな、騙されたんだよ!!」
「なっ……!」
騙された、そんな言葉を投げつけてきた聖。やっと状況を理解した雅久だったが、もう遅かった。
怪物に囲まれたのだ。こんな大量の敵、二人だけでは足りる筈がない。
雅久と聖が話しているうちに李織はすでに敵と戦っていたが、その数は減ったとはいえない。
「せいぜいこの怪物たちに倒されるんだな!……っははは!」
そんな捨て台詞を吐きながら聖は敵軍の後ろの方へ身を翻す。遠距離から弓矢で攻撃するつもりなのだろう。
大量の敵、そしてこちらに攻撃を仕掛けてくる聖。もうここで終わりか、と李織は覚悟をきめた。
(最後の悪あがきだ。)
「雅久さん、私に魔力を分けてください。武器に魔力を纏わせて一気に敵に攻撃します!」
李織は雅久に届くよう必死の思いで叫ぶ。
「ああ!いくぞ、李織!」
雅久もそれに応える。
次の瞬間には雅久の手から紫色の光が現れ、その光は李織をめがけて一直線に進む。
李織の武器は禍々しい紫のオーラを放ち始めた。
すると李織は手に装着しているその武器を中心に爆発を起こす。
自分の身の危険を顧みない行動。捨て身での攻撃だ。
「……っ!あああ!」
李織は爆発に耐えながらわずかばかりのうめき声をあげる。
辺り一帯は爆発から生じた爆風と雅久からもらった魔力が融合し、紫色のドームのようになる。

爆発が終わる頃には敵の数は激減し、さっきまでよりも圧倒的に戦いやすくなった。
「李織!よくやった!」
爆発の間にも雅久は聖や爆発に巻き込まれなかった敵と戦っていた。
「……雅久さん、あとは任せましたよ……」
李織がその場にバタリと倒れ込む。爆発の中心にいたため服は裂け身体もボロボロだ。
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