第39話

文字数 726文字

1人、動けない者が居た。
千多喜は片膝を付いて床の1点をじっと見つめている。
玲亜二のことを考えているのだろう。
玲亜二を殺した罪悪感、そして玲亜二を守れなかったどころか、自分で手にかけたという事実、それら全てが千多喜の精神を支配する。

初の攻撃で体制を崩したフィリベールだったが、すぐに反撃を開始する。
フィリベールの見た目はスーツに長いマントと、いかにも魔法を使いそうなものであったが、意外にも戦い方は武闘派であった。
フィリベールは左手の拳を握りしめる。そしてその拳で勢いよく真吉の右頬を殴る。
「痛っ……てぇな!!!」
真吉は乱暴な口調で弱さを見せないようにしているが、実際に食らったダメージはかなりのものだろう。
続いてフィリベールは右足を大きく上にあげる。
丁度その足の下にいた初の頭に踵を落とす。
「うわぁぁっ!」
初はすぐに床に押しつぶされてしまった。
「真吉!初!大丈夫か!?」
まだ攻撃を食らっていない貴祢が2人を心配し声をかける。
しかしそんな余裕もない。すぐに自分にもフィリベールの攻撃が飛んでくるだろうと貴祢は予想する。
その予想は的中し、フィリベールは貴祢の左腕を鷲掴みにする。
「……何だよ!離せ!」
全力で抵抗するもフィリベールの力の前にはびくともしない。
貴祢はそのまま空中で一回転させられ、腕を折られてしまった。
「貴祢!腕、無事?」
「ごめん……折れちゃったかもしれない。これから役に立てなくなるかも。」
確認をとる初に謝る貴祢。自分はもう攻撃に参加出来ないかもしれないと思い、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ううん。謝らないで。初たちでなんとかするよ!」
そんな時も初は頼りがいがあった。ああ。こんなに頼もしい仲間が居てよかったな。と貴祢は再認識する。
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