第19話

文字数 1,091文字

「大変だー!!!!皆!集まれ!」
ある日の朝。建物中に響き渡る大声を発する雅久。
「なんだなんだ!?」
一瞬にして仲間たちは騒ぎだす。まだ時刻は午前7時。寝ていた人もその騒ぎにより目を覚まし、皆が食堂へと集まる。
「雅久うるさい……俺の睡眠時間が……」
いつもなかなか起きてこない玲亜二ですらも起こされていることから、雅久の声がどれだけうるさかったかが分かる。
「睡眠時間より大変なことがあったんだ!!」
相変わらず大声で雅久は話す。そんなに勿体ぶらずに早く話してよ、と芹。
「聖が……聖が居ないんだ!」
「……ええ?」
葉加が腑抜けた声を発する。
「聖が!一昨日から帰ってきていないんだ!」
「それって……結構やばいんじゃない〜?」
あまり人に興味なさげな初が言う。それをきっかけにほかの仲間たちも、もしかしたら別荘の外で倒れて……?などと話し出す。
「まずは!この別荘の中を皆でもう一度探そう!」
雅久のその声から、なぜかその場にいなかった貴祢と、当人の聖を除いた14人の大捜索が始まる。
「食堂に……は、もちろん居ないか。」
「聖の部屋も抜け殻になってるし。」
「庭……は開放的すぎて探すとかの話じゃないね。」
それぞれが思い当たる場所を探してみるが、聖は見つからない。いよいよこれは別荘の外か……と皆が思ったところで――雅久の目の前に貴祢が現れた。
「あ!貴祢じゃないか!大変なんだ!聖が……!」
「聖が?」
「一昨日から別荘に姿を現していないんだ!大変だ!」
少し間を置いて、貴祢が呟く。
「聖なら……きっと狭間の世界だよ?」
「……えええええ!?!?!?!?!?」
さながら断末魔のようだ。再び雅久の声が建物中に響き渡る。世界の狭間には貴祢の力を使わないと行くことが出来ないのだから、聖の居場所はほぼ確定しただろう。
「今度はなに?!」
先程と同じような展開だ。仲間たちが雅久の元へと集まる。
「聖が……世界の狭間に……」
もしかして敵に倒されたんじゃ……?とざわつく仲間たち。李織が言う。
「早く世界の狭間に行った方がいいでしょう。誰が行きます?」
「俺様が行く!!!!!そして李織!お前も行くんだ!!」
「……私ですか。承知しました。」
丁寧にお辞儀をする李織。2年間執事をしていたからその名残だろう。
「李織!気をつけて行くんだぞ!雅久もな!」
いつもはそんなことを口に出さない真吉が言う。
「真吉に言われたら……いえ、なんでもありません。ありがとうございます。」
真吉の言葉に驚きながらもしっかりと感謝を述べる李織。
「よし!そうと決まったのなら早く行こうじゃないか!良いか?貴祢!」
「ああ。」
貴祢は力を使い、2人を世界の狭間へと送り出す。
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