第40話

文字数 1,304文字

「ふふ……2人だけでなんとか出来るほど、私は弱くありませんよ。」
会話を聞かれていたのか、フィリベールが何やら不穏なことを言う。
「そんなのわかんないじゃん!初だってやれるよ!」
初も言い返す。真吉に至っては怒りが最高潮に達して言い返す気力すらも起きないようだった。
「さあ……どうでしょう。まだ攻撃を続けるんでしたら、あなた達の骨も折って差し上げましょうか?」
「……っ!」
初は黙り込む。腕が折れたら数ヶ月間は戦えなくなるだろう。その間にまた異変が起きたら自分は役に立てなくなる。
「ああ。折ってみたらどうだ?おれはそんな煽りには動じないぞ。」
しかし今度は真吉が言い返す。さっきまであれほど煽りに動じまくっていたけれど、もう真吉の怒りはそんなレベルでは無いらしい。

サッと真吉はフィリベールの背後に回る。
しかしフィリベールは初の腕を折ることに気を取られ、後ろを気にしてはいなかった。
そこを真吉が剣で2連撃。フィリベールの背中に深い傷をつけることが出来た。
「……なかなかやりますね。でもこれはどうでしょう?」
そう言うとフィリベールの周りには黄色いオーラが出始める。恐らく魔法を使ったのだろう。
こいつ、やっぱり魔法も使えるのかよ……と真吉は内心呆れてしまう。
「さあ、第2ラウンドへ突入ですよ。」
その言葉の隙をつき、初が拳でフィリベールの鳩尾を狙う。しかし――
「痛っ!」
そう。フィリベールは反撃の魔法を身にまとったのだ。近づけばその魔法が発動してしまうため、自分が怪我をしなければフィリベールにダメージを与えることは出来ない。
それに真吉も気付かず攻撃してしまう。
「……っ!?」
2人は近距離攻撃専門。フィリベールには近づけない。その上先程からの蓄積したダメージでボロボロのため、自分へのダメージを顧みず攻撃するのは非現実的だ。
「あらあら……もう攻撃できませんかね?ふふ、それではまた会いましょう……今度はもっと強い仲間を連れてくるのがいいですね。」
そう言ってフィリベールは後ろを向く。魔法を使って塔から瞬間移動をしようとしている時だった。

パァン!――――――

鳴り響く銃声。それだけで誰のものかは明確だった。
「逃がさない……絶対に!」
千多喜がようやく立ち上がったのだ。
「千多喜!」
初が希望を宿した目で千多喜を見る。
ずっと攻撃できずにいてごめん、と千多喜は謝罪する。
貴祢がふと目の前を見ると、頭から血がドロドロと流れ出て、地面に膝を着くフィリベールの姿が目に入った。
「千多喜!追撃を!」
「ああ!」
そう。千多喜の使う武器は銃。遠距離からでも攻撃できるのだ。
そのまま千多喜はフィリベールに何度も銃弾をとばす。
隙をつかれたフィリベールはもう立ち上がることも出来ず、やられる一方だった。

そして、フィリベールの魔法がとける。
「初ちゃん!真吉くん!今だ!」
「は〜い!」
初と真吉の連続近距離攻撃。
何度も切りつけ、そして何度も殴りかかった。

いつの間にかフィリベールは塵となり、存在ごと無くなったかのように消えた。

「倒した……」
貴祢が呟く。
「やった!やったよー!」
初は嬉しさのあまり泣いてしまっていた。


「……良かった。」
千多喜は小さな声でそう言った。
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