第9話

文字数 1,411文字

「なんだ……ただの人間じゃないか。1人だけ人間では内容だが……まあそんなに変わらないだろ。さて、お前らは俺に完膚なきまでに叩き潰され――」
「先制攻撃!早い者勝ちっしょ!」
急に光紘が前へと飛び出し、腰元の薬品を敵に撒き散らす。それを引き金に3人も攻撃を始める。光紘の撒いた薬品は敵の体に触れると強く弾け、視界を奪う。
その隙に貴祢が槍で追撃を入れ、六花が扇で切り刻んだ。
貴祢たちの攻撃で一瞬怯んだ敵だったが、すぐに体勢を立て直す。
今度は貴祢に向かって爪を振り下ろすが、貴祢はそれをひらりとかわす。
そしてそのまま槍で一撃を加えようとしたが……
なんと敵は3本ある腕のうちの2本を犠牲にし、攻撃を防いだのだ。
そして残った1本の腕で再び攻撃を仕掛けてくる。
それをなんとかかわす貴祢。
「厄介だな……あの腕」
そう呟く貴祢。敵は今度は六花に狙いを定め、攻撃を仕掛けるが、六花はひらりとかわす。その隙をついて光紘が薬品を投げつけるも、それもまた敵に防がれてしまう。
「なんでだよ!あいつ反則だろ!」
悔しそうに叫ぶ光紘。
そうこうしているうちに、敵は貴祢に狙いを定めて攻撃を仕掛けてくる。それを槍で受け止めるが、その隙をついて六花が攻撃を加える。しかしそれも防がれてしまい、今度は六花に狙いを定める敵。
それに気づいた貴祢は六花の援護に向かう。
そして2人で同時に攻撃を繰り出すも……やはり受け止められてしまう。
すると敵の様子が少し変わった。
なんと3本あった腕のうち1本が再生し始めのだ。それを見た光紘は、
「再生能力があるとかまじかよ!」
と叫ぶ。
そして今度は貴祢に狙いを定めて攻撃を仕掛けてくる敵。それを槍で受け止めようとするが、なんと受け止められずにそのまま吹き飛ばされてしまう。
「まずい!このままじゃ……」
3本の腕から繰り出される攻撃は凄まじく、3人でも防ぐのがやっとだ。このままでは負けてしまう……そう思った時、御世汰が叫んだ。
「光紘!楳下さんを援護してあげて!貴祢は僕が援護する!」
「よっしゃ、任せろ!」
「わかった。」
御世汰の指示で光紘と貴祢が動き始める。するとさっきまでとは比べ物にならないほど攻撃が激しくなった。それに合わせるようにして六花も攻撃を繰り出す。
3本の腕から繰り出される猛攻を3人でなんとか防ぎながら、隙を見つけては攻撃を仕掛ける。その繰り返しだ。
そしてついにその時が来た。敵の腕が1本再生しなかったのだ。
「1本やっつけたわよ!」
六花が仲間に伝えるよう叫ぶ。すると、
「ぎゃーぎゃーうるせえなあ……」
戦いが始まってからは一言も発さなかった敵が喋り始めたのだ。
「1本再生しなくなったからってなんだ?お前らはあと2本も倒せるのか?」
そう言いながら敵は手についていた鋭い爪をもっと長く、鋭くさせる。
「これやべーよ!次の攻撃が来る前に俺っちの麻痺の薬で止める!皆は下がれ!」
光紘がそう言うと、3人は後ろに下がり敵と距離をとる。
腰元からさっきとは違う薬品を取り出し敵に命中させようとする光紘。しかし
「――危ない!」
「……っ!?」
敵の鋭い爪が光紘の右胸を貫いたのだ。敵の爪の先からは血が滴っている。
「光紘!大丈夫!?」
「御世汰!早く回復を――」
「無理だ!」
焦った様子で叫ぶ御世汰。
「なんでだ!?何かあったのか!?」
貴祢が問う。
「あそこまでの重症には対応できない!」
「じゃあ……どうすれば!?」
貴祢と六花の顔は一瞬にして絶望の表情へと変化した。
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