第12話

文字数 829文字

「〜♩」
昼下がり、太陽は傾き窓には日差しが差し込む。
別荘の廊下を歩く葉加の姿は楽しそうに見えた。
「どうした?葉加、そんなに楽しそうにして。」
そこに偶然通りかかった貴祢が声をかける。
「貴祢!?ちょうど良かった〜!頼みたいことがあって!」
待ってましたと言わんばかりの葉加の反応が少し面白くて笑いそうになる貴祢。
「世界の狭間、俺も行ってみたい!だからさ、俺の事世界の狭間に送ってくれない??」
「……なんだそんなことか。全然いいよ。」
「ただ、危険なことがあったらすぐに知らせてね。異変かもしれないから。」
「わかってるよ〜」
そんな口を叩きながら葉加は転送される準備をする。
準備が出来たところで、貴祢は葉加の手を握り、世界の狭間へと転送させる。
葉加の視界がふっと奪われる。気づいた時にはもう、そこは世界の狭間であった。

「……ここが世界の狭間か〜」
あたりをきょろきょろと見回してみる。
(特になにもないなぁ)
そんなことを考えながら西の方に向かって進んでみる。
すると――
「あれ?人がいる……?お兄さんやっほー!!」
人が居たのだ。なぜこんな所に人がいるのかは深く考えなかったが、とりあえず声を掛けてみる。

「しっ!黙れ!追っ手がくるかもしれないだろ!」
明らかに焦った様子の男は葉加に怒鳴ってみせる。
「追っ手って……お兄さんなんか悪いことしたの?」
「悪いこと、と言えばそうかもしれねえけど――自分を守るためにはこれしか無かったんだ。」
さっきまでの激昂した様子はどこへやら。男は少し悲しい表情をしながら語った。
「とにかく……ここから南にある村には近づかない方が良い。お前はどうやら生きている人間のようだし……」
「あ、そっか。お兄さん死んでるんだもんね。」
「結構ズバズバ言うんだな、お前……」
あ、ごめんなさいと謝る葉加。
しばらくすると男はまた西の方へ逃げていった。
(近づくな……か。)
近づくな、と言われたら近づきたくなるのが人間の性だ。
葉加は悪びれる様子もなく南の方へ向かい、村を探す。
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