第11話

文字数 1,659文字

「……光紘のことだけど、」
御世汰が深刻な様子で話し始める。
「もう右半身が自分の意思で動かすことができない状態だった。だから今手術を行っている。」
「そんな……」
「……どんな手術なの?」
不安そうに問う貴祢。
「それが――この街には人間を手術する技術も道具もないんだ。」
「それじゃあ!どうするの!?」
六花が声を上げる。
「そう言いたくなる気持ちも分かるけど……落ち着こう。」
貴祢がそうなだめる。
「うん。……それで、光紘の体は、半分が機械になる。」
「――えっ?」
「……そんな……」
2人の顔が青ざめる。
「仕方なかったんだ。この街には壊れた機械を修理する技術しかない。光紘も、自分で、それでいいって言ったんだ。」
「…………そうだね。本人が納得してるなら。それよりもまずは、手術の成功を願おう。」
「…………そうね。」


「やーー心配させてごめんな!」
ベッドの上で元気そうに喋る光紘。その右半身は灰色の機械になっていた。
「でも、機械直す技術すごくてさ、これ、俺っちが自由に動かせるんだぜ?サイボーグ……?ってこと?」
そう言って右腕を動かしてみせる。
「光紘!暴れるな!安静にしてろ!」
貴祢が注意する。
「でも……光紘は本当にそれで良かったの?」
六花が心配そうな顔で問う。
「……それはわかんねーけど、また戦えるし?とりあえず生きてりゃそれで良いかなって思った。仕方ないことなんだよ。結局死ぬか機械になるかどっちかしか選択は残されてなかったしな。」
さっきとは打って変わって、真面目な様子で光紘は淡々と話す。
「……話は変わるんだけど、この街はもうすぐ消える。みんな成仏して、異変解決ってことだ。」
貴祢が話し出す。
「……そう。それじゃあ早く元の世界に戻らなきゃよね。」
「光紘は大丈夫か?今から元の世界に戻っても。」
「おう!大丈夫っしょ。」
「それじゃあ、いくよ。」
貴祢がそう言うと、視界が白い光によって奪われる。
気がつくと、貴祢たちは元の世界に戻ってきていた。

「ただいま〜」
真吉が用意してくれた別荘へと帰る貴祢たち。
夜遅かったため、もう寝たであろう人もちらちら居たが、ホールには満紘と李織、聖がいた。
「おお!おかえり!」
びっくりはしているものの、暖かく迎え入れてくれた満紘。
「もう貴祢さんたちが行ってから1週間ほど経ちましたし……どんな様子が気になっていた頃でした。お帰りなさい。」
「ああ。ただいま。ちゃんと怪物倒して、異変解決してきたぞ。」
「怪我とかしなかったっすか?……て、あれ?」
聖が光紘の方を見る。
「光紘さん……その腕……」
「あーバレちゃった?実はな、これ――――」
自分の右半身について語り出す光紘。

「そうなんすね。そこまでしてまで戦ってきてくれたこと、感謝しかないっす。」
「……」
聖は光紘のしたことに対して肯定的なように見えたが、満紘の顔は徐々に暗くなっていく。
その様子に光紘は気づいていたが、話を続ける。
「だから――これからは拳でも戦えるし、また薬も使えるし、どんどん俺っちのこと使ってくれよな。」
「光紘、戦いのこともいいですが、あなたはまず安静にしているべきでは?早く寝てください。寝室はあちらですよ。」
普段から光紘には冷たい李織だったが、今回もそれは例外ではなかった。
李織に言われるがまま寝室に連れていかれる光紘。
それがなんだか面白くて、貴祢は笑ってしまう。
「――ということで、今回の異変は解決させてきた。次の異変が現れるまでは自分たちは戦いの準備や作戦を練ることに専念しよう。」
「……そうだね。」
相変わらず暗い顔のままの満紘だが、戦いには前向きで居てくれいるようだ。
「……もし、次の異変が起こったら、ボクも戦いにいっていいかな?」
提案する満紘。断る理由はない、とすぐに貴祢は承諾する。

「それじゃあ、まずは……寝ようか。もう夜も遅いし、六花も御世汰も疲れているだろうし。」
「そうね。これからの事は、改めて明日みんなで話しましょう。」

3人で寝室に向かう。
すぐに寝れるかと思ったが、貴祢は満紘の暗い顔が気がかりですぐには眠ることが出来なかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み