第10話

文字数 973文字

「この街に病院があったはずだ!僕はそこに光紘を連れていく!2人に任せるのは心苦しいが……頼めるか?」
「ああ。任せてくれ。」
貴祢と六花はそう答え、再び敵に立ち向かう。
「いくよ。六花。」
貴祢がそう言うと、六花は頷く。
そして2人で同時に攻撃を仕掛ける。
しかし、敵は地面を蹴り貴祢に突進してくる。咄嵯の判断で横に回避する貴祢。だが、次の瞬間。敵は方向転換してまた突進してくる。そのあまりの速さに避けるのが間に合わないと判断した貴祢は槍を斜めに構え、攻撃を受ける姿勢をとった。
鋭い音を立てて敵の腕と槍が衝突する。貴祢は衝撃のあまり目を瞑る。
次の瞬間、貴祢が目を開くと――敵の腕がもう一本、砕け散っていたのだ。
「あれ?」
「貴祢!やったわ!御世汰が爆発する魔法をかけてくれてたのよ!」
そうなのだ。御世汰が光紘を担いで外に出る一瞬の隙に、御世汰は貴祢の武器に魔法をかけていた。
「ありがとう、御世汰……」
貴祢は呟く。
しかし、まだ1本腕が残っている。
貴祢と六花は再び攻撃を仕掛ける。
腕が1本になったことで、攻撃を避けるのがかなり楽になった。
貴祢がどんどん敵に槍を突き刺していく。
しかし、弱点に全く当たらない。
それを六花が扇での近接攻撃でカバーするが、六花の体力はほとんど限界に近かった。
それに勘づいた貴祢は、ダメ元ながら槍を地面に突き刺し――敵に蹴りを入れた。
「うがぁっ!?」
なんと、その攻撃が見事ヒットしたのだ。
その隙をみて六花が最後の力を振り絞り扇から衝撃波を放つ。
すると的は四方に砕け散った。

「貴祢!、やったよ!」
そう言いながらその場にへたり込む六花。
「六花!よくやった!!」
貴祢が六花の元へと駆け寄る。その目は喜びに溢れていた。しかし、貴祢の体力も限界だったようでそこで倒れ込む。
「……言い忘れてたけど、狭間の世界に出現した街は異変が解決すると街ごと消えてしまうんだ。そして、その街の人たちは無事に成仏できる。」
「……よかった。それじゃあ、この街の人は成仏出来るんだね。お世話になったお爺さんも、色々教えてくれた人も。」
「そうだね……」
そこで貴祢は何かに気がつく。
「ということは……早く光紘の所に行かなきゃ!」
体はボロボロだが、力を振り絞って立ち上がる。
「……アタシも行く。」
六花も立ち上がる。しかしその足元はおぼつかない。
2人は街の病院へと急いで向かった。
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