第34話

文字数 1,857文字

「初!最後の攻撃だ。真吉とタイミングを合わせて敵の背後にまわって!」
「おっけ〜!」
真吉の突きと初の蹴りで敵をどんどん殲滅させていく。
貴祢は槍を床に突き刺しそこを中心に爆発を起こす。

――4階フロアのミッションは、「連戦場」。
次から次へとわいてくる敵を倒していき、生き残った者がフィリベールと戦う権利を得られる。

今は最終の5段階目。夥しい量の敵がわいてくるが、何とか全員生き残って終えることが出来た。

貴祢の槍で敵の弱点を的確に突き、5回の連戦がやっと終わる。
「ミッションクリアです」
無機質な音声がフロア内に響き渡る。
「……ふぁあああ。よかったああ!」
初がその場に座り込む。
「やっと勝てたね……」
貴祢が小さく呟く。その声には疲労が混ざっていた。
「でもここからあいつ……なんだっけ、フィリなんちゃらとも連戦なんだろ?」
「そうだね……今のうちに体を休めておこう。」
3人は各々怪我の治療を始める。
「そういえば……2人はどこに行ったんだろう。」
真吉は小さな声でそう言う。本当に、ほかの2人にしか聞こえないくらいの小さな声だった。
しかし――

「いい質問ですね。先程の2人ですが……ミッションクリアですよ。「4人で」私と戦いましょうね。6階フロアで待っています。」
フィリベールが唐突に現れる。
その言葉には何かを含んでいた。その微細な違和感に貴祢は気づく。
「4人って……どういうことだ?5人じゃないのか?」
「あらあら……そうですね。こちらの方は知らないのでした。玲亜二さんは、殺されましたよ。」
「……っ!?!」

――玲亜二が、死んだ
その衝撃の知らせに貴祢は思わず立ち上がった。
「どういうことだ!お前が殺したのか!?」
「いえ……私は何もしておりませんよ。あの子じゃないですかね、なんと言いましたか……千多喜くん?が、殺したのでしょう。」
フィリベールのその言葉に3人は青ざめる。
真吉は頭に血が昇ったのか、怒りで拳を震わせながら叫ぶ。
「千多喜はそんなことするような奴じゃない!」
「あらあら……本当に、ですか?まあいいでしょう。6階で待っていますね。」
そう言いながら身を翻し、3人を残してどこかへと消えていくフィリベール。

「嘘……千多喜が?」
初が信じられない、という様子で絶望の声を上げる。
「ありえない。千多喜はそんな事しない。」
「そうだよ。よりによって千多喜が、玲亜二を――」
有り得ない。何度考えてもそんなことをするようには思えない、と未だ信じられぬ思いで6階フロアへと足を運ぶ。


「あ、ああ、あ、た、貴祢……」
絶望した様子の千多喜がこちらを見てくる。
「千多喜……なんで玲亜二を殺した!」
真吉が誰よりも早く千多喜の元へ向かい、胸ぐらを掴み問いただす。
「ごめん……ごめんごめんごめん……」
「真吉!1回辞めるんだ、千多喜にも色々事情があったんだろ、まずは話を聞こう。」
貴祢が真吉を宥める。真吉は素直に少し反省した様子で、すまん、と呟き1歩下がる。
「そして――千多喜、何があったんだ?」
「……っ、「殺し合い」をさせられたんだ。俺だって、俺が1番、玲亜二を守りたかった……」
「千多喜……」
殺し合い、その言葉で全容を把握したのか3人は顔を見合わせる。
「千多喜、大丈夫だよ。千多喜は悪くない。」
「さっきはすまん……お前も思うことはあるよな。」
口々に千多喜を励ます言葉を述べる。

「おやおや……何やら騒がしいですね……」
「フィリベール、お前……!」
怒りの矛先はフィリベールへと向く。
真吉は一気に剣を鞘から抜き両手に持つ。そしてフィリベールとの距離を詰め、最初の一撃を入れる。
その攻撃はフィリベールの顔に直撃し、かすり傷程度だったが怪我を負わせることができた。
「あらあら……こんなものですか。もっと骨のある人はいらっしゃらないのですか?」
フィリベールは煽る。残念なことに真吉は煽り耐性を持っていないのでその煽りに乗ってしまう。
「何だって……??お前、二度と口を聞けなくしてやるぞ。」
「真吉!無理な突進はするな!」
また貴祢に宥められる。それでも真吉は止まらない。
両手に1本ずつ持った剣を振るう。
右手の剣がフィリベールの首に掠り、フィリベールの首からは血が流れる。
それを合図とするかのようにほかの仲間たちもフィリベールに集中攻撃を行う。
初は剣も槍も何も持たずに素手で戦うのが得意だ。フィリベールの脚に蹴りを入れ、体制を崩させる。
貴祢はいつものお得意の槍でフィリベールを滅多刺しにする。何回も何回も刺す。一撃は軽いが、追撃を入れることで敵にも十分通用するような戦い方だ。
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