第14話

文字数 1,510文字

「……あなた達、よそ者ですよね?」
「この村にはよそ者は入れさせられません……お引取りを……」
「俺たちはここにいる怪物を倒しに来た!」
村の門番たちが入口を塞いでいるところを突破しようと奮闘する。まずは葉加が大声で目的を叫んだ。
「……怪物、ですか?」
「あの方には手出ししない方が良いかと。逆らうと大変なことになりますよ。」
「でも……その怪物のせいで困ってるんでしょう?」
紗楽が話を続ける。
「私たちがその怪物を倒したら、あなた達の為にもなると思います。」
「……しかし……」
「まあ、無理にとは言わないけど……よく考えて欲しいな。君たちがボクたちを村に入れたことは黙ってていいからさ。」
『逆らうと大変なことになる』それを避けるために言った言葉だろう。満紘のその言葉で門番たちは顔を見合わせる。
「……それなら。」
「え?」
「……どうぞ、お入りください……」
門番達がついに根負けしたのだ。
「ありがとうございます。」
門番たちに感謝を伝える貴祢たち。
「どうか……どうか倒してくださいね。あの怪物を。」
門番が呟く。それは貴祢たちの耳には届かなかった。

村の雰囲気は暗く、重苦しい空気が漂っていた。
空を見上げてもどす黒い雲が一面を覆っていて、太陽すら見えない。
そんな中、村には身体の透けた人間が下を向いて震えている。
この地獄のような状態に直面した貴祢たちは思わず息を飲んだ。
「あの……」
「……私から話せることは何もありません。」
「……あ、はい……」
村人に話しかけてもこの始末。
逆らうと制裁を与えられる恐怖からこうなっているのだろう。
「困ったな……このままじゃ怪物がどこにいるのかすらも掴めない。」
満紘が呟く。
「んー、なんとなくだけど……怪物、あそこに居そうじゃない?」
そう言いながら葉加は一際目を引く家を指さす。
「確かに。なんか扉の前に人もいるしね。」
紗楽も同意する。

「すみませーん、ここって怪物さんの家ですか?」
「ちょ、葉加!しっ!」
そうとなったらすぐに行動し、家の前までたどり着いた葉加たち。門番に対して葉加は軽い口を叩く。
「……なんで人間がここに?」
「それは秘密。とにかくここを通して欲しいんだけど。」
「確かにここは怪物の家だが……うぐっ!?」
「大丈夫ですか!?」
話していた門番に突然雷魔法のようなものが落ちる。
「かはっ……、君たちも、怪物に、逆らったら、こうなるからな……」
息も絶え絶え、門番がそう貴祢たちにつたえる。
「これが……制裁ってやつ?」
貴祢が呟く。
「お前ら人間がこの街にたどり着くとは……何事だ?」
頭上から声が聞こえる。恐らく怪物の声であろう。
「……何事もなにも、あなたが知る権利などないでしょう?」
普段は温厚な満紘が敵に言い返す。
「村入口の門番はどうした?あいつらはなぜ人間を通したんだ?」
「そこの門番さんにも言いましたが、それは秘密です。――それはそうとして、あなた達怪物の目的はなんなんです?」
「……なんだお前。生意気な事言いやがって。」
口論がヒートアップしていく。
「生意気……ですか。あなた達怪物の方が好き勝手してらっしゃるでしょうに。」
「オレンジ髪のお前、そんなこと言っていていいのか?さっきの門番の姿を見たのに。あいつは俺の居場所を吐いたから制裁を与えてやったんだ。お前にも――」
「隙あり!」
満紘が魔法で大きな炎の玉を敵にぶつける。
その姿は、先手必勝と言いながら敵に薬を振りまく光紘の姿と重なる。
「弟を傷つけたお前ら怪物を、僕は許さない。」
「そっか、だから満紘は――」
「貴祢!いくよ!」
だからあの時立候補したのか、と思い返す貴祢。
そんな貴祢をよそに葉加は攻撃を始める。
満紘が放った炎が効いたのか、敵の動きは若干遅い。
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