第14話
文字数 835文字
今日の授業も終わった。業務レポートと授業計画も作成し終わった。大塚総士は講師控室で散らかった自分のデスクを整理しながら、これから帰ると自宅にメッセージを送った。
すぐに既読が付くのを期待していたけれど、三分ほど待っても画面の表示は変わらなかった。
大塚は諦めてスマートフォンをジャケットにある内ポケットにしまうと、書類の束を無造作に鞄に突っ込み控室を後にした。
子供が生まれて一ヶ月も経っていないのに、容赦なく働かされる。子供の起きている姿を最後に見たのはいつだろうか。個人経営の塾では育休を取るなんて、夢のまた夢。
パートナーの実家が近いおかげで、相手一人に子育ての負担を負わせずに済むのが、せめてもの救いだった。
つらつらとそんなことを考えながら、大塚は急ぎ建物を出ようとした。その時だった。どこからか空気を裂くような短い叫び声が聞こえた。
「栗原先生?」
特徴のあるハスキーな声の主の名を、大塚は呟いた。声は建物の裏手から聞こえて来たような気がした。
大塚が控室のある建物の二階から急いで階段を駆け降りると、建物の裏手に通じるドアが開いていた。
慌てて外に飛び出した大塚の目の前で、塾の経営者である栗原秀隆が、腰の辺りを必死で抑えながら苦痛に顔を歪ませ倒れていた。
出入口のドアから注ぐ照明が、栗原の腰が血で赤く染まっていることを大塚に教えた。
「栗原先生!?どうされたんですか、先生!」
大塚が慌てて栗原に駆け寄った時、その数メートル先で何かが動いたような気がした。
大塚が目をやると、栗原の愛車の向こう側に黒のウィンドブレーカーのようなものを着た人影が見えた。
暗くて顔は良く見えなかったけれど、大塚は思わず、おい!と声を上げた。
その声に驚いたのか、黒服の影は駆け足で逃げていった。ほんの一瞬見ただけだったが、間違いなく男性だった。
だが、後を追い掛ける余裕は大塚にはなかった。足元で苦しむ栗原が意識を失わないよう何度も声を掛けながら、大塚は救急車を呼んだ。
すぐに既読が付くのを期待していたけれど、三分ほど待っても画面の表示は変わらなかった。
大塚は諦めてスマートフォンをジャケットにある内ポケットにしまうと、書類の束を無造作に鞄に突っ込み控室を後にした。
子供が生まれて一ヶ月も経っていないのに、容赦なく働かされる。子供の起きている姿を最後に見たのはいつだろうか。個人経営の塾では育休を取るなんて、夢のまた夢。
パートナーの実家が近いおかげで、相手一人に子育ての負担を負わせずに済むのが、せめてもの救いだった。
つらつらとそんなことを考えながら、大塚は急ぎ建物を出ようとした。その時だった。どこからか空気を裂くような短い叫び声が聞こえた。
「栗原先生?」
特徴のあるハスキーな声の主の名を、大塚は呟いた。声は建物の裏手から聞こえて来たような気がした。
大塚が控室のある建物の二階から急いで階段を駆け降りると、建物の裏手に通じるドアが開いていた。
慌てて外に飛び出した大塚の目の前で、塾の経営者である栗原秀隆が、腰の辺りを必死で抑えながら苦痛に顔を歪ませ倒れていた。
出入口のドアから注ぐ照明が、栗原の腰が血で赤く染まっていることを大塚に教えた。
「栗原先生!?どうされたんですか、先生!」
大塚が慌てて栗原に駆け寄った時、その数メートル先で何かが動いたような気がした。
大塚が目をやると、栗原の愛車の向こう側に黒のウィンドブレーカーのようなものを着た人影が見えた。
暗くて顔は良く見えなかったけれど、大塚は思わず、おい!と声を上げた。
その声に驚いたのか、黒服の影は駆け足で逃げていった。ほんの一瞬見ただけだったが、間違いなく男性だった。
だが、後を追い掛ける余裕は大塚にはなかった。足元で苦しむ栗原が意識を失わないよう何度も声を掛けながら、大塚は救急車を呼んだ。