第74話大混乱②

文字数 1,363文字

東都物産社長佐々木健治、妻佳代子、娘真鈴は、東都病院に搬送され、7日後に息を引き取った。
医師の診断では、エボラ出血熱に似た症状の感染症だった。
ただし、「エボラ出血熱」に症状が似ているというだけで、「ウィルス」そのものは、全く別物であって、世界でも初めてのウィルスであり、対処療法(緩和策)以外に、対応策がなかった。

どこから、そのウィルスが入り込んだのかは、全く不明のままである。
東都ホテルの中華料理店からとは特定できたが、仕入先担当者にも感染症が広がり、事情聴取に赴いた保健所職員、警察官全てが感染し、どうにもならない。

感染症は、瞬く間に都内、全国、そして海外にまで広まり、悪意をこめた「東京ウィルス」の名で、全世界に知れ渡った。

日本政府をはじめとして、各国政府は対応に苦慮した。
とにかく、この東京ウィルスの感染力、重症化率は高かった。
家庭内で、学校や会社の中で、電車、自動車、バス、船舶、航空機内等で、突然目と口から出血し、止まらなくなり、そのまま死亡する人が後を絶たず、しかも加速度的に増加し続ける状態。

対処療法しか持っていない病院は、常に満床。
対処療法を施す医師や看護師も、次々に感染し、死亡した。

製薬企業も、特効薬作成に手間取った。
とにかく感染者が、バタバタと死んでいくので、治験対象者を確保することも困難。
ようやく作成し、投与するも、重症化率が高まる一方なので、効果が確認できない。

東都ホテルでの最初の感染発見から2週間で、日本では、500万人全世界で1億人が死亡した。(しかも加速度的に増えつつある)

日本を含め、世界各国で、ほとんどの社会活動が停止した。
電力会社、水道、ガス、公共放送、鉄道交通機関が、かろうじて動いている状態。
それ以外の企業、学校などは、全て停止。
スーパーマーケットも営業を停止した。(外に出歩く人がいなくなった)



日本国内の死者800万人、全世界での死者2億人になった時点で、陳朱明と陽平は動き出した。
製薬会社「五毒大帝」を立ち上げ、新感染症の特効薬「五毒清浄」を、まず日本政府に売りつけたのである。
(元々、陳朱明の傘下製薬企業が作った秘毒、無効化薬も作成済み)
(治験資料は、簡単に作れた)
(尚、売込み担当者は陽平と陳朱明で、政府側は官房長官)

陳朱明と陽平は、「健康そのもの」の状態で官邸に出向いた。

陳朱明
「我が一族は、長安以来、二千年の歴史を持ちます」
「その一族に伝わる古い文献に、同じ症状、特効薬がありましたので、密かに量産化を行っておりました」
陽平
「まずは、日本政府に売ります」
「その後、日本政府でも量産化をご希望なら、こちらで対応します」

官房長官は、相好を崩した。
「お付き合いの長い陳先生」
「そして子供の頃から知っている陽平君を信頼します」
「地獄に仏とは、まさにこのことです」
「確かに高価な薬ですが、命には代えられないので」

陳朱明は、にこやかに笑った。
「選挙も近いことですしね」
陽平は念を押した。
「優先的に治療するために、全国の国立病院を10は欲しい」
「そこで治療効果を出せば、与党は逆転勝利しますよ」

官房長官は、了承した。
「確かに、バカな野党は、死んでも構わん」
「批判ばかりの議員には、治療薬は与えない」

少し間を置いた。
「陽平君、こっちからも頼みがある」

官房長官は陽平をじっと見ている。
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