第72話陽平と陳朱明

文字数 1,096文字

陽平は、かつての婚約者真鈴の「病院レイプ被害」について、陳朱明から聞いた。

ただ、陽平は、真鈴には、何の同情も、持たない。
マスコミに少し騒がれただけで、簡単に長い関係を切り捨てられたのである。
もともと、陽平は真鈴に「思い」は抱いていなかった。
「子供の頃から、やけにベタベタしてくる肥満気味の女」
「親同士が、政略的に、結婚させたがっただけ」

陽平は、窮地の真鈴を救おうなどとは、全く考えないし、佐々木家に対しても、救いたくない。
東都物産の元々の創業者は、明治期の福田と佐々木の先祖である。
しかし、佐々木家は、しだいに福田家を経営から排除する方向に動いた。
それに嫌気がさした福田家の先祖が、大正期に学問の道に進んだ。
その学問の世界で成功したのは、祖父の福田要蔵から。
要蔵は、政財界にも、巧妙に人間関係を広げ、政財界の黒幕とまで恐れられた。
(ただ、その背景には、風間組の協力もある)

陽平と真鈴との関係を、佐々木家が進めた目的は、陽平と血縁の風間組と有馬組の力を東都財閥に根付かせるためである。
ただ、それが三流週刊誌とSNS炎上で、進められなくなってしまった。
そして、陽平は簡単に切り捨てられ、福田家は、先祖代々の株式まで強奪されてしまった。

陽平は、懸命に策(佐々木家への復讐策)を練った。
「佐々木家は炎上したが、東都社長には変わりない」
「東都そのものを狙う前に、佐々木家を全員殺す」
「福田家も燃やされ、命を狙われたんだ」
「遠慮する必要はない」

陽平は、陳朱明に協力を求めた。
「東都ホテルの中華料理店を使えませんか?」
陳朱明は、頷いた。
「個室ですか?」
「簡単です、いつでもかまいません」
陽平
「一気には死んでほしくない」
「苦しみと恥辱の中で」

陳朱明の目が光った。
「毒ですね」
「日本に解毒剤がない毒を使いましょう」
少し間を置いた。
「陽平さん、それだけでいいの?」

陽平は、陳朱明の考えが読めない。
「なかなか東都をつぶすのは難しいので、まず三人から」

陳朱明は笑った。
「東都コロナにしましょうか」
「全ての東都ホテル、東都ビルで」
「世界にたくさんあるので、大パンデミックの再来です」
「何しろ、あれは儲かるから」
「少ない投資で、儲けは莫大」

驚く陽平に、さらに笑った。
「陽平さん、薬品会社の社長になってください」
「WHOにも根回ししますから」
「今度は風邪まがいのウィルスではなくて」
「感染したら、一週間で死ぬ」
「身体のあちこちから血を垂れ流してね」
「しかも感染力が強い」

陽平も笑い出した。
「陳さん、そうなると世界帝国も作れますよ」
「面白いなあ」
「まずは東京で実権ですね」

陳朱明は、大きく頷き、金庫からクスリ箱を取り出した。

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