第15話芳樹への処分

文字数 1,144文字

芳樹は問題動画拡散の翌朝、東都物産ビルに向かった。
アパートから駅、電車内では、いつもと全く変わらない。
(誰も芳樹を特別視するような感じはない)
芳樹は、せせら笑った。
「は!馬鹿馬鹿しい、何がSNSだ、問題動画だ」
「なーんの関係もねえって!」
「オタオタするから、つけこまれる」
「高知の男は、そんなもの気にしねえ」

東都物産ビルに着いた。
受付を済ませ、廊下を歩き始めると、スマホが鳴った。
人事部の杉村の声だった。
「桑田芳樹君、昨日のメッセージを呼んでないのかね?」
「PCにもスマホにも送ったが」

芳樹は、慌ててスマホを見た。
確かにメッセージが入っていた。
「桑田芳樹君、諸般の事情により、新橋支店営業部配属が変更になりました」
「明日から、千葉の製紙関連会社倉庫に出向です」
「尚、地図を添付しました」

読み終えるなり、桑田芳樹の顏に朱が入った。
そのまま大声で騒ぎ始めた。
「馬鹿野郎!」
「認められるか!」
「ざけんな!」
「あんな動画で腰が引けるのか!東都物産は!」
「根性のカケラもねえ!」

出勤してくる他の社員に、大声で怒鳴った。
「高知の男をなめるな!」
「日本に維新を起こしたのは、高知の坂本龍馬だ!」

東都ビルの警備員が、芳樹の前に来た。
「桑田君だね、これ以上騒ぐと、迷惑行為で警察に通報するよ」
芳樹は、それでも、引かない。
「るせえ!警備員フゼイが!」
「俺は、天下のW大野球部のエースだ!なめんじゃねえ!」
「四の五の言ってねえで、杉田部長を呼べ!」
「いいか!おれは何も悪くねえ!」
「俺の電話を受けない杉田が悪い!」

文句を言い続けた芳樹だったが、警備員のほうが屈強だった。
腕をしっかり掴まれ、警備員室に入れられ、座らされた。

少し座っていると、人事部の杉村が厳しい顔で入って来た。
「桑田君、本来は採用取り消しだ」
「千葉への出向は、せめてもの温情に過ぎない」
「もし、それを拒否するなら、君の仕事はない」
「これ以上騒ぐなら、業務妨害で当局に連絡する」
「すでに、高知のご両親には連絡済みだ」
「ご両親も、動画を見たらしくて、泣きながら温情を求めて来られた」

人事部杉村は、うなだれる芳樹に、迫った。
「千葉に行くのか、行かないのか」
「早く決めなさい」
「こちらとしては、どうでもいいが」

芳樹の声が震えた。
「・・・杉田部長は・・・」

人事部杉村は、さらに厳しい言葉。
「君は、杉田部長の顏に、泥を塗った」
「かなり、ご立腹だ、採用取り消しを強く主張された」
「全て自業自得と思うが」

芳樹は、ヨロヨロと立ち上がった。
「千葉に出向きます」
そのまま東都物産ビルを出て、振り返ることもない。

前方の電線にカラスが停まっていた。
芳樹と目が合った。
カラスは芳樹をじっと見て、すぐに飛び去った。
カラスは、ハンバーガーチェーン近くのゴミを喰らい始めている。
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