第65話福田家全焼

文字数 1,034文字

夜も深い午後11時、横浜山手の福田家から火の手があがった。
同時に迷惑系ユーチューバーが、実況中継を始めた。
「ヤクザと結託した、悪辣非道な福田陽平と福田家に天罰が下りました」
「すごいですねえ!」
「かの立派なお庭と住宅が、真っ赤に、どんどん燃え広がって行きます」

その迷惑系ユーチューバーの周囲を、「極道天罰」「日本の恥、横浜の恥」「この街から出ていけ」と、大きなプラカードを掲げた集団が大騒ぎしながら動き回る。

消防車と救急車は、なかなか姿が見えない。
サイレンの音はしているが、近くには来ない。

実況中継の動画を見ながら、君澤浩二が笑った。
「迷惑系ユーチューバーも、プラカードの連中も全て清水一家」
「プラカードは、左翼を真似した」
「消防車も救急車も、警察も福田家に近づけない」
「周囲を違法駐車だらけにした」
「全焼するまで、動かす気もない」

芳樹は、せせら笑った。
「陽平の奴」
「東都をクビになって」
「婚約者から捨てられ、寝取られ」
「今度は家屋敷も無くなる」
「ああ、いい気味だ」
「あの能面野郎の末路だな」

清水亜里沙は、話題を変えた。
「次は有馬組」
「関西をどう攻めるか」

君澤浩二が、いつもの冷酷な顔に戻った。
「風間組は、主に政府と企業を揺すって来たが」
「有馬組の資金源は、クスリと武器、歓楽街、ホテル、寺社仏閣、芸能界、野球」
「そんな細かくて、ナンパな体質だ」

芳樹も高知出身、ぼんやりとは理解している。
「まあ、関西の芸能人は全てヤクザって聞いたな」
「スポーツ新聞の記者は、当たり前のように入れ墨していた」
「噂では、おなじみのO監督も、有馬組から、女をあてがわれていたとか」

清水亜里沙が、具体的な提案。
「内部抗争を煽る」
「今のトップは、有馬清司」
「陽平の叔父か」
「その部下に、寺社仏閣担当の石井卓治と、主に芸能担当の小林敦がいる」
「跡取りと目されていた陽平の命も不明」
「そうなると、跡目まではいかなくても、NO2の座を、取り合う」
「そこに、かく乱工作を仕掛ける」

麻友が質問。
「アイドルコンサートつぶしは、得意、それを絡めるの?」
「関西アイドルグループか・・・多少は知っているけど」
夏子は、寺社仏閣が心配になった。
「芳樹、京都の寺も焼くの?」
「私、京都好きだよ」
茜は、夏子をなだめた。
「いいじゃない、ものすごいシノギになりそう」
「少なくとも、いいオドシになる」

芳樹は、少女たちを目で制した。
「福田家三人の死亡確認後に動く」
「慌てると、ボロが出る」

君澤浩二と清水亜里沙が、同時に頷いている。

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