第75話大混乱③

文字数 1,228文字

陽平が官房長官の顏を見ると、官房長官は謹厳な顏を崩した。
「陳先生と陽平君の製薬会社の仕事の段取りがついたら官邸に来て欲しい」
「肩書は内閣官房補佐でも、首相秘書官でも何でもいい」
「実は陳先生も承諾している」

(陽平は陳朱明の頷く顔で、気持ちを固めた)
「わかりました、抜かりなきよう対応します」

官房長官は、目を閉じ、昔を懐かしむような顏。
「要蔵先生には、大変お世話になった」
「何度もピンチを救われた」
「ここで恩返しをしなければ、あの世で叱られる」

陽平は、官房長官の顏を覗き込んだ。
「選挙用の秘密資料も、祖父の部屋にありますよ」
「どれ一つ見ても、危ない資料ばかり」
「党首クラスが軒並み落選します」

官房長官は頷いた。
「ああ、欲しいねえ」
「反対闘争連中が多いのかな」
「反対に反対を重ねて妨害の限りを尽くして、例えば成田空港ができれば、臆面もなく使う」
「だから、反対のための反対党って言われる」

黙って話を聞いていた陳朱明が口を開いた。
「ところで官房長官」
「例のクスリを国会議員分お持ちしました」
「官房長官から分けますか?」
(そのまま感染症特効薬の箱を渡した)

官房長官は、うれしそうな顔。
「まあ・・・与党と与党よりの野党だけに分配するよ」
「それ以外の左派政党には渡さない」
「死ぬなら死ねばいい、それで国政が進むから」
「国立病院も、満床を理由に断れと指示してある」

陽平は、官房長官の放言を目で抑えた。
「渡すも渡さないも、受け取らないのでは?」
「政府のやることは、全て反対をするのが、野党」
「おそらく特効薬で与党議員が回復しても、絶対に認めない」
「コロナのワクチンも拒否した人もいましたから」



芳樹たち一派は、陽平たちの官邸での密談と、その後の事務的なことも、掴んでいた。
(陳朱明の四川閥に対抗している上海閥とロシア閥華僑を買収して、陳朱明事務所の盗聴を行っていた)
(また、四川閥も一部買収して、芳樹たち一派用の分を含め、相当な量の特効薬を確保済み)

芳樹は、全員に提案した。
「おそらく、仕事の成功の宴をするよな」
「そこを狙えないか」
君澤浩二は頷いた。
「上海閥のドンに聞いたら、陳朱明は、かなり嫌われ者」
「横浜中華街の会合でも、浮いているとか」
「充分に根回しをすれば、できるよ」
清水亜里沙の目が光った。
「成功の宴で、陽平と陳朱明を爆殺」
「その爆破の勢いで、中華街にも大きな被害」
「再興は上海閥とロシア閥・・・かな」
夏子は芳樹の顏を見た。
「芳樹はそれで気が済むの?」
芳樹は頷いた。
「陽平と東都に復讐できれば、それでいい」
少し笑った。(清水亜里沙に目配せした)
「その後は・・・タヒチに行く」
麻友の目がキラキラと輝いた。
「タックスヘイブンか・・・いいね・・・」
茜は、少し不安。
「そんなに上手くいくの?」
芳樹は茜の乳房をギュッと掴んだ。(茜はトロンとした顔になった)
「上手くいくように、やる」
「ここまで来て、ビビる必要はない」

(君澤浩二は苦笑い、他の女性は、うらやましそうに茜を見ている)
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