第76話大混乱④

文字数 1,357文字

新感染症特効薬は、内閣官房主導で、全国10の国立病院に優先配布された。
(と同時に、全国立病院で扱う薬品は、陳朱明傘下の製薬会社が独占管理することになった)

新感染症幹線特効薬は、配布された各国立病院で劇的な効果をあげた。
ただし、政府に批判的な左派系政党、学者、マスコミ関係者は徹底的に調べられていて、常に入院はおろか、治療も(満床を理由に)拒否された。
当初、感染症特効薬にステレオタイプの疑念や批判を声高に叫んでいた左派系野党議員、政治学者、医療専門家、コメンテーターは、背に腹は代えられず、投薬を希望したが、叶えられず、そのまま死亡した。

結果として総選挙を前に、与党支持率は一気に上昇した。(20%台から70%台に)
内閣支持率にいたっては、85%まで達した。
対して、左派系野党の支持率は1%にも達しなくなった。

地上波テレビのワイドショーに政府批判を行うようなコメンテーターは、出演できなくなった。(全てが政府賛美者の独占になった)
SNSでも同様、特に首相と官房長官の賛美であふれるようになった。
逆に左派系野党、学者、マスコミのサイトには、殺害予告のようなコメントしかない。(通報しても、サイト運営者、政府、警察が、全く対応しないので、外出も不可能となり、非難を受けたまま、そのまま家庭内で死亡するケースが増えた)

政府反対勢力の力が極度に弱まった時点で、政府は感染症特効薬を全国の公立病院に配布した。(ただし、野党系知事、市長がいる病院には、配布しなかった)
野党系知事、市長は、次々と離党、与党支持を表明し、ようやく感染症特効薬を得ることができた。

上記のような経緯を受けて、新感染症は日本国内では約一か月後、海外においては約二か月後に、収束した。


新感染症の収束を受けて、横浜中華街のホテルで「陳先生の功績と名誉を讃える会」が催されることになった。
政府からは、首相、官房長官、厚労相が出席。
華僑関係者は、四川系、香港系、台湾系、北京系の派閥が出席。
(上海系とロシア系は直前になっても姿を見せない)
(陽平は陳朱明秘書として出席した)

首相自ら、謝礼の言葉を述べた。
「全世界を襲った未曾有の感染症を、完膚なきまでに退治できたのは、まぎれもなく陳先生の功績であります」
「日本政府として、そして世界各国の元首の代理として、心より御礼申し上げます」

陳朱明も挨拶を行った。
「ここにいる福田陽平君のおじい様、要蔵先生には何度も教えられ、救われました」
「横浜中華街のここまでの発展も、要蔵先生のご指導あってのこと」
「要蔵先生は常々、言っておられました」
「世界中の人が集まる、この港町横浜は、世界融合の地である」
「この世界融合の地で、世界に冠たる中華料理の美味を広げなさいと」
「美味は、人々を幸せにできる、中華は世界を幸せにできると」
「そのお言葉に、全華僑は、深く感じ入り、一致団結して、この横浜中華街を作ってまいりました、全ては要蔵先生のお気持ちに応えようとの思いです」
「今回の薬の提供は、ほんのお礼に過ぎません」
「今後も、全中華は、横浜だけでなく、全世界を幸せにしてまいります」

乾杯の音頭は、官房長官だった。
「全世界の健康回復と、陳先生の功績に感謝の意を込めまして」
「乾杯!」

官房長官と全出席者が、盃を持った時だった。

大爆破が起きた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み