第12話動画拡散

文字数 1,135文字

芳樹とW大野球部の失態は、その日の午後1時に、ネット動画で拡散された。
(町中華の店員が撮影して、投稿した)
(店主も店員も、芳樹とW大野球部の、度重なる店内での大騒ぎと、酔って他の客にも絡む⦅特に若い女性に対して⦆ことから、相当な反感を持っていた)

芳樹とW大野球部の面々は、地域警察署にも出頭を求められ、「今後の処分」を示唆された。

午後3時、失意を抱えて自分のアパートに帰った芳樹に、連絡が入った。
「東都物産人事部の杉村です」
「ネット動画での件と言えばわかりますか?」

芳樹は、最初は「知らんぷり」を決め込もうとした。
「いや・・・何のことです?」
「体調不良で、そのまま帰宅しました」

人事部杉村の声が低くなった。
「警察、W大野球部、中華料理店主からも、実名で連絡が入っている」
「もちろん、経営者にも報告した」
「ネット動画サイトには、はっきり元W大野球部、東都物産採用内定者と出ている」
「どうして、そこで、嘘をつく?」
「正直で、曲がったことが嫌いが、高知の男ではないのか?」
「君自身が、言っていたことだ」

芳樹は、開き直った。
「だから何です?」
「東都物産に何も迷惑を掛けていません」
「多少、昼飯で騒いだと言っても、体調不良は体調不良ですから」
「採用取り消しなんて、させませんよ」
「もう、あなたの話は聞きません」
「杉田部長と直接話します」
(芳樹は、そのまま人事部杉村との電話を切った)

そして、すぐに杉田部長に電話をかけた。
しかし、何度電話をかけても、「通話中」の音になる。
世情に疎い芳樹でも、予想がついた。
「着信拒否か?」
「それでも天下の東都物産か!」
「ちょっと町中華で騒いだだけで」
「気に入らねえ!」

埒(らち)が明かない芳樹は、先輩の竜二にも電話をかけた。
しかし、竜二にも、つながらない。
「おい!」
「俺が女を世話してやるって言っただろう?」
「電話出ろよ!」
「腰抜け竜二!」
「お前まで着信拒否?」

芳樹は、怒りにまかせて、冷蔵庫に入れてあった缶ビール(500)3本を飲み干した。
かなり眠くなった頃、スマホが鳴った。
声を聞いた途端、幻滅した。

高知の母芳江だった。
「芳樹、何だか芳樹に似ている人が、パソコンに出ているって、隣の美代子おばさんが言っていたけど、知らんわって、言っておいた」
「それより、一度高知に戻って」
「父さんも、腰を痛めてね」
「畑が荒れてきたの」
「竹林も酷いかな」

芳樹は、実に面倒と思ったが、母芳江は言い出したら聞かない、しつこい性格である。
「わかった、近いうちに」
と答えるしかなかった。(承諾しない限り、電話は延々と続くため)

母芳江との話を終え、芳樹は強い眠気を覚えた。
眠りに入った午後5時に、スマホとPCに、東都物産からメッセージが入ったが、
芳樹は見ることも無かった。
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