第13話東都物産役員室で懇談

文字数 1,154文字

東都物産役員室で、陽平は、出勤して来た根岸専務と大塚常務にも、挨拶。
その後は、佐々木社長も含めて、4人の懇談になった。

佐々木社長は満面の笑顔。
「陽平君のことは、紹介するまでもないな」
根岸専務も笑う。
「そうですね、生まれた時から」
大塚常務
「何と言っても創業系直系で、大株主様」

陽平は、冷静に対応する。(物怖じもない)
「普通の新入社員として研修を受けましたし、あまり社内で知られたくはないです」

佐々木社長
「ただ、社長付の秘書として、重要な内外の会議と接待には連れて行くよ」
根岸専務
「そうですね、将来も考えて、お付き合いも重要です」
「陽平君には、東都物産の将来もかかっていますから」
大塚専務は陽平の顏を見た。
「陽平君は、今夜の外務大臣とも、実は懇意だったよね」

陽平君は、少し笑った。
「母の女子大時代の同級生です」
「子供の頃に英語を習いました」

佐々木社長は苦笑い。
「実は、俺は彼女が苦手でね」
「いつも、論破される」
「陽平君、頼むよ」
根岸専務も笑った。
「それで今日から陽平君が役員室ですか」
「でも、あの国との取引拡大は、我が社の死活問題にも、なり得る」
大塚常務が陽平の肩を揉んだ。
「陽平君、頼むよ」

肩を揉まれた陽平は、柔らかく笑う。
「秘書ですから、余計なことは言いませんよ」
佐々木社長も、意味ありげに笑った。
「余計なことでなければ、言ってもかまわない」

社長付の、もうひとりの秘書花沢日奈子が、懇談する4人の前に来た。
「民自党の幹事長がお見えです」
「事前打ち合わせでは、お昼も、一緒です」

佐々木社長が陽平の顏を見た。
「遠縁だよな」
陽平は、目をクルクルとさせた。
「母の従兄」
「じいさんの、教え子ですが」
根岸専務が頷いた。
「現代政治学の権威、福田要蔵先生」
「厳しいけれど、人情味のある先生でした」
大塚専務も懐かしんだ。
「時の首相が、要蔵先生には、頭を下げて教えを請うた」
「ガンガン叱るが、最後には、妙案を授けた」
「野党にも、上手に根回しをしてくれて」
「それで、日本の停滞した国会や政治が、進んだ」
「日本の裏面を知る大先生」

陽平は、苦笑い。
「あちこちの原稿を頼まれて、ブツクサ言いながら机に向かっていました」
「締め切りがない世界を作りたい、政治なんて、どうでもいいか」
「その文句もきつくて、聞いているほうが、ハラハラしました」

役員室のドアが開き、民自党幹事長堀田が入って来た。
東都物産の3トップに緊張気味に頭を下げた後、陽平を見た。
「おや・・・これはこれは・・・」
「陽平君、役員になるの?」

陽平は、深く頭を下げた。
「佐々木社長付き秘書の福田陽平と申します」
「今後とも、よろしくお願いいたします」

堀田幹事長は、そのまま陽平の手を、ガッチリと握った。
「首相にも、早く会った方がいいかな」
「気にしていたから」

陽平は、軽く頷いている。
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