第59話君澤浩二

文字数 1,378文字

君澤浩二は、博多の出身。
地元極道「天神一家」の本家が実家。
(ただし、君澤浩二が中学生の頃、有馬組との抗争に破れ、傘下に入った)

地元の高校を卒業し、東京のW大に進み、野球部に入った。
センターでクリーンアップの有望選手となり、活躍も多く、スポーツ新聞から取材を何度も受けたことがある。
ただし、プロのスカウトは来なかった。
プロは、君澤浩二の実家を調べ上げていたからである。

プロになれないとはいえ、博多に戻りたくなかった浩二は、親に金を無心し、飛行機で北アフリカのチュニジアに飛んだ。
チュニジアの外国人傭兵組織には、実家天神組で兄のようにしたっていた格闘と戦闘の猛者、宮本毅がいたからである。

宮本毅も、君澤浩二の到着を、喜んだ。
「俺の舎弟だ」と、傭兵仲間に紹介した。
(宮本毅は、傭兵たちに人望が厚かった)

宮本と、世界各国の傭兵は、様々な格闘、戦闘技術を君澤浩二に教え込んだ。
(厳しい拷問技術も教わった)(ただし、男色も教え込まれた)
チュニジア時期では、数回、アフリカの内戦に参加した。
激しい内戦に遭遇し、宮本毅が爆死した後、親しくなった傭兵の紹介で、アメリカに渡り、グリーンベレーに入った。

グリーンベレーでは2年間の厳しい訓練の後、「隠密作戦」で、中東で様々な破壊工作を実施し、成果を挙げた。
そのまま、グリーンベレーに残ることも考えたが、「あまりの民間人の殺し過ぎ」に、嫌気がさしていた。

そんな折、日本の両親が死んだ。
葬儀の時、風間平蔵にスカウトを受けた。
「まずは、風間組に来い」
「いつかは天神一家を再興させる」

君澤浩二は、迷わず、受けた。
その後、地元の天神一家は、古くからの子分にまかせ、風間組の「裏工作」に勤しんだ。

風間組本家では、福田陽平に格闘技術を教え込んだ。
福田陽平は、凄まじい程の格闘のセンスがあった。
また、格闘になると、狂気そのものだった。
鋭い突きや蹴りに、何度もアバラを折られた。

ただ、君澤浩二は、福田陽平に「魅力や男気」は感じていない。
確かに、頭脳と度胸、格闘は、末恐ろしい。
東都財閥、風間組、有馬組のバックもあって、将来の日本の首領であることは間違いない。
「あまりにも、他人を見下す」
「風間平蔵が死んだら、従う気はない」

君澤浩二は、芳樹を考えた。
確かに、頭の良さは感じない。
悪賢いようで、実は純朴。
ガキで田舎者丸出し、と思うこともある。
陽平や東都に嫉妬が強いことも、見え見えだ。
由紀たち、(不良)女子高生が、芳樹を取り合って遊ぶのも面白い。
(少なくとも、陽平には、そんな姿が想像つかない)
(陽平は、あまりにも怜悧だから)


君澤浩二は、清水亜里沙と一緒に、風間平蔵と陽平が、「アイドルコンサート爆破」にけん制をかける様子を見ていた。

清水亜里沙は、ブツブツと文句を言っていた。
「陽平なんて、つぶせばいいのに」
「芳樹は、悪になりきれないなあ」

君澤浩二は、清水亜里沙にささやいた。
「アイドルコンサートの爆破」
「東都物産の築地再開発事業」
「陽平と真鈴の結婚」
「それを全て、つぶしたら、面白いな」

清水亜里沙は、笑った。
「マジで?殺されるよ」
君澤浩二も笑った。
「俺は、仕掛けだけして、フランスに飛ぶ」
清水亜里沙も笑った。
「いいね、やろう」
「私はタヒチに飛ぶ、芳樹連れて、愛欲の日々だ」

君澤浩二は、陽平と風間平蔵が血の海に沈む様子を思い浮かべ、含み笑いになった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み