第14話民自党堀田幹事長

文字数 1,394文字

堀田幹事長との昼食は、役員室階の奥、和風(料亭風)の別室だった。
陽平は、東都物産の役員と並び、堀田幹事長に相対した。

堀田幹事長は、陽平を見て相好を崩す。
「親父さんの陽一さんとも、話したんだ」
「これで東都物産の将来も安心だとね」

佐々木社長は、堀田幹事長を手で制した。
「本日、初勤務だよ」
「この昼食が初仕事だ」
根岸専務は陽平を見た。
「おじい様は、日本が誇る政治学者」
「親父さんは日本トップの経済学者にして日銀理事」
「陽平君は、実業の世界だね」

陽平は、苦笑い。
「二人とも、実は、締め切りに追われていた人」
「その忙しい時に、政治家とか記者が訪問するのだから、機嫌の悪い対応」
「それを聞く家族のほうが、ハラハラしていましたよ」
「そもそも、簡単に安請け合いで執筆を引き受けるからそうなる」
「東京ディズニーランドの約束も、何度も、すっぽかされて」
「・・・それで健治社長と行くことのほうが、多かったんです」

大塚専務が頷いた。
「学者の世界には、それもあって真似したくなくて進まなかったと」

陽平は笑った。
「二人とも、文債とか言っていました」
「編集者に対して、文章という、債務を背負うと」
「難しいのは、締め切りと、文字数制限がある、ということ」
「言い訳としか聞きませんでしたが」
「ほんとうに・・・締め切り前は、二人とも気難しい顔で、家の中をうろついて」
「それでも進まないと、家から姿が見えなくなる」
「スマホも無い時代は、どこに行ったのかわからない」
「心配が数時間、それを超えれば、家人には、迷惑でしかない」

堀田幹事長が笑った。
「陽平君からすれば、日本トップの政治学者も、日銀理事も・・・」

佐々木社長
「話が変わるが、今日は選挙だろ?」
堀田幹事長は頷いた。
「首相は、その気です」
「いろいろ失策もありましたが、ご支援をお願いしたい」
「野党がまとまらないので、政権は維持できますが」
根岸専務
「目玉政策が少ないと思うよ」
「規制緩和を進めるべきでは?」
大塚常務
「我が社だけでなくて、日本の産業界にメリットがなければ、支援も難しいよ」
「円安時世だから、海外のハゲタカに狙われている企業も多い」
堀田幹事長は、苦しい顔。
「インバウンドも、ありがたい限りとも言えない」
「例の爆買いも、一時的でした」
「それを、求め過ぎた企業と店は痛い目に」

佐々木社長が陽平に話を振った。
「今時点の陽平君としては?」
「政治学専攻の陽平君として、日本の目玉政策になるものって、あるかな」

陽平は、珈琲を一口飲んで、答えた。
「インフラの整備は、誰が何を言っても進めるべき」
「道路、護岸、洪水、疾病対策は、どんな国のどんな時代でも、政治の基本ですから」
「国民の生活環境の整備は、多少金がかかっても、良質化を図る」
「そこに困窮世帯支援強化整備も含める」
「減税政策は、金をバラまくだけなので、無意味」
「一時的な浪費にしかならない」
少し間を置いた。
「現実の急務として、防空壕の整備を始めたほうがいい」
「いつ、日本が火の海になるか、わからないので」
「・・・野党は反対するでしょうが・・・」

堀田幹事長は、深く頷いた。
「政策秘書に欲しいよ」
陽平は、恥ずかしそうに笑った。
「今時点の素人考えです」
「そんな簡単には出来ません」

昼食会は午後二時に終わり、堀田幹事長は満足な顔で帰って行った。

直後、総務部長佐藤と人事部長阿部が、役員室に入って来た。
二人とも、困惑した様子である。
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