第63話陽平の窮地
文字数 1,457文字
一連の事件の直後、福田陽平は、窮地に陥っていた。
突然SNSで、「東都物産と風間組、有馬組の真っ黒な疑惑」が騒がれ始め、続いて暴露系週刊誌のトップ記事にされてしまったのである。
(東都物産社長秘書の陽平が風間組本家に出入りする証拠写真が、数ページつけられていた)
陽平は、東都物産社長佐々木健治から、「当分自宅待機」を命じられ、連休中の首相外遊同行も、当然のように中止とされた。
頼りにしていた風間平蔵は、風呂で倒れて(しかも病院に担ぎ込まれたのは、数時間後)、目も見えず、口もきけない状態。
いとこの由紀は、強い急性薬物中毒状態で、後楽園ドーム直近のホテルで発見されたが、現在警視庁の管理下、後楽園ドームの事件を聞く手段にはならない。
君澤浩二に連絡を取った。
君澤浩二は、例の低い声。
「イスラムでしか使っていない爆薬には違いない」
「それに犯行声明も出ている」
「その犯行声明をくつがえすことは出来ない」
「彼らのメンツを汚す、メンツを汚せば、さらなる凶行に及ぶ」
「だから警視庁も、その線でしか捜査しない」
君澤浩二は、少し間を置いた。
「総裁が主張した神経ガスは、実はドームに設置していない」
「恨みが無い人は苛めないと、芳樹が方針を変えたので」
「それと、平蔵総裁と由紀お嬢様は、よくわかりません」
「いずれにせよ、日本にはない、毒が使われたとの情報です」
陽平は、清水亜里沙にも連絡を取った。
清水亜里沙は、神妙な声。
「平蔵親分も、由紀お嬢様も心配だね」
「組の若衆も、かなり死んだみたい」
「陽平君が、このまま総裁になる?」
陽平は否定した。
「それは・・・いくら何でも」
「表の世界で、生きたいので」
清水亜里沙は、続けた。
「浩二さんとも話し合ったの」
「風間組の若衆は全滅だから、当面、清水一家の若衆を呼ぶよ」
「平蔵総裁が、マトモに戻ったら、その時点で指示を仰ぐ」
「それが嫌だったら、陽平君が総裁になって」
「本来は、陽平君が組を仕切るべきだよ」
「経理は、私がそのままやってもいいし、陽平君が新しい人を探してもいいよ」
「私が嫌だったら、清水一家は協力しない」
「この際だから、縁を切ってもいいよ」
陽平は、足元が震えるような不安を覚えた。
今の時点で、亜里沙と(清水一家と)縁を切れば、再び血で血を洗う大抗争が始まるリスクが強くなる。
下手をすれば、全国規模の極道大抗争にもなりかねない。
(陽平自身が「風間組を継ぐ」、そこまでの覚悟も、裏の世界での実績も人望もないと、わかっている)
「実は仕組まれたのか?」とも感じたが、とても口には出せない。
風間平蔵は意識混濁、娘の由紀は急性薬物中毒で、二人とも回復も復帰時期も不明。
風間組の直系若衆も全滅状態なので、陽平を護るべき人が、皆無なのである。
仮に、有馬組(陽平の母の実家)が都内に出て来たとしても、清水一家とは関係が非常に悪い。
当然のように大抗争が始まってしまう。
(実態は、風間平蔵が裏工作(金)で当面の抗争を抑えて来ただけだった)
陽平は、清水亜里沙に従うしかなかった。
「亜里沙さん、当面は清水一家に頼みます」
「平蔵さんと、由紀の回復を待ちます」
「生きているのに、俺が継ぐわけにはいかない」
失意を抱えるだけの陽平を、更なる衝撃が襲った。
「婚約者」の真鈴から、直接「婚約解消」を宣告されたのである。
「陽平君とはもう無理、わかるでしょ?」
「財務省主計局の土屋さんと結婚することにしたの、すごく立派な人」
「お父様は東都の役員、陽平君も知っているよね」
陽平は、全ての荷物を持ち、佐々木家から、福田家に戻ることになった。
突然SNSで、「東都物産と風間組、有馬組の真っ黒な疑惑」が騒がれ始め、続いて暴露系週刊誌のトップ記事にされてしまったのである。
(東都物産社長秘書の陽平が風間組本家に出入りする証拠写真が、数ページつけられていた)
陽平は、東都物産社長佐々木健治から、「当分自宅待機」を命じられ、連休中の首相外遊同行も、当然のように中止とされた。
頼りにしていた風間平蔵は、風呂で倒れて(しかも病院に担ぎ込まれたのは、数時間後)、目も見えず、口もきけない状態。
いとこの由紀は、強い急性薬物中毒状態で、後楽園ドーム直近のホテルで発見されたが、現在警視庁の管理下、後楽園ドームの事件を聞く手段にはならない。
君澤浩二に連絡を取った。
君澤浩二は、例の低い声。
「イスラムでしか使っていない爆薬には違いない」
「それに犯行声明も出ている」
「その犯行声明をくつがえすことは出来ない」
「彼らのメンツを汚す、メンツを汚せば、さらなる凶行に及ぶ」
「だから警視庁も、その線でしか捜査しない」
君澤浩二は、少し間を置いた。
「総裁が主張した神経ガスは、実はドームに設置していない」
「恨みが無い人は苛めないと、芳樹が方針を変えたので」
「それと、平蔵総裁と由紀お嬢様は、よくわかりません」
「いずれにせよ、日本にはない、毒が使われたとの情報です」
陽平は、清水亜里沙にも連絡を取った。
清水亜里沙は、神妙な声。
「平蔵親分も、由紀お嬢様も心配だね」
「組の若衆も、かなり死んだみたい」
「陽平君が、このまま総裁になる?」
陽平は否定した。
「それは・・・いくら何でも」
「表の世界で、生きたいので」
清水亜里沙は、続けた。
「浩二さんとも話し合ったの」
「風間組の若衆は全滅だから、当面、清水一家の若衆を呼ぶよ」
「平蔵総裁が、マトモに戻ったら、その時点で指示を仰ぐ」
「それが嫌だったら、陽平君が総裁になって」
「本来は、陽平君が組を仕切るべきだよ」
「経理は、私がそのままやってもいいし、陽平君が新しい人を探してもいいよ」
「私が嫌だったら、清水一家は協力しない」
「この際だから、縁を切ってもいいよ」
陽平は、足元が震えるような不安を覚えた。
今の時点で、亜里沙と(清水一家と)縁を切れば、再び血で血を洗う大抗争が始まるリスクが強くなる。
下手をすれば、全国規模の極道大抗争にもなりかねない。
(陽平自身が「風間組を継ぐ」、そこまでの覚悟も、裏の世界での実績も人望もないと、わかっている)
「実は仕組まれたのか?」とも感じたが、とても口には出せない。
風間平蔵は意識混濁、娘の由紀は急性薬物中毒で、二人とも回復も復帰時期も不明。
風間組の直系若衆も全滅状態なので、陽平を護るべき人が、皆無なのである。
仮に、有馬組(陽平の母の実家)が都内に出て来たとしても、清水一家とは関係が非常に悪い。
当然のように大抗争が始まってしまう。
(実態は、風間平蔵が裏工作(金)で当面の抗争を抑えて来ただけだった)
陽平は、清水亜里沙に従うしかなかった。
「亜里沙さん、当面は清水一家に頼みます」
「平蔵さんと、由紀の回復を待ちます」
「生きているのに、俺が継ぐわけにはいかない」
失意を抱えるだけの陽平を、更なる衝撃が襲った。
「婚約者」の真鈴から、直接「婚約解消」を宣告されたのである。
「陽平君とはもう無理、わかるでしょ?」
「財務省主計局の土屋さんと結婚することにしたの、すごく立派な人」
「お父様は東都の役員、陽平君も知っているよね」
陽平は、全ての荷物を持ち、佐々木家から、福田家に戻ることになった。