超能力

文字数 1,188文字

 「らちがあきません。」
 本部から様子を見に来た男は、しびれをきらしどこかに電話していた。

 翌朝、男女のペアが茶々戸家を訪ねてきた。
 「本部からの依頼で営業に来ました。でも、お金はいりません。」
 男が名刺を差し出す。
 「異母児さんですか?」
 ネネはしげしげと二人を眺めた。男はスーツ姿で紳士風。女はぽっちゃりした、お世辞にも美しいとは言えないお嬢様風。
 「この方、動物と会話が出来るっぽいんです。ちなみに私、マネージャー兼家政夫のベーダーです。」
 その男の言葉にかぶせるように女性が叫ぶ。
 「執事かーい!ベーダー。とあるブスの少女いぼじ。」
 「ちなみに二人は異母兄弟。」

 ネネは困ったように薄笑いを浮かべた。
 「とりあえず、蔵のほうへ。」
 二人はいくつか建ち並ぶ土蔵蔵を通り、ネコのろう城する抹茶蔵の前へと来た。
 「ベーダー、見て。蔵らが建ってるよ!」

 二人の異様な雰囲気にネコは梁の上で立ち上がる。背中を丸めて毛を逆立てている。
 「コー、コー。」
 男の息遣いが荒くなった。何かを感じているのか?
 「怒ってますね。ベーダーに何のヨーダといっています。ダークサイドにいるネコちゃんの表情を見たいので、明かりをつけますね。」
 女は手に持った懐中電灯を掲げた。
 「ライト・セーブ!」
 ネコに光を当てる。
 「フー!」
 ネコは目を細めて益々激しく威嚇する。
 「今のフーはやめろという威嚇ですね。よせ、フー。」
 真面目なのか、単なるねたなのか。
 「猫は難しいですね。馬ならすぐに会話できるのですが。乗馬でホースの扱いには慣れていますから。でも、何に怒っているのかは解りましたよ。」
 女性はしたり顔をした。だれでも、わかる。あんた等におこっとるんだぎゃ。
 「ねずみです。」

 彼女の話によると、ネズミに負けたのがショックだったというのだ。
 「ニャアと言わそうとした相手が、チュウといわなかったですか?」
 そういわれれば、酔っ払いが『アルチュウでチュウ』と言った。
 「なので、あそこでネズミを待っているんです。」
 そうと、わかれば話は早い。

 「キャア!」
 ネネの前に灰色のロングフードで顔を隠したベーダーが現れた。それを見たネコが男に飛びつき、爪を立てて引っかく。逃げる灰色男。追いかけるネコ。
 「たまらん。今回は退散しよう。一旦ごめん!」
 「チャンチャン。」
 「コー。」

 「猫は普段は感情を押し隠していてわかりにくい。これを、猫を被るといいます。でも、怒ると感情が前面に出てきます。それと、人間もそうですが落ち込んだときには体を動かすのが一番。」
 ネコを優しくだき抱えるネネに、そういい残して、芸人たちは去っていった。
 「僕、頑張ったよ。だから、やさしくして。ほっぺに、チュー。」
 「バーカ!」
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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