コロコロの真実

文字数 710文字

 翌日はしけで水揚げが無かったようで、マチは行商に出ていなかった。しかたがないのでマチの自宅へと向かった。
「ようきんしゃったな。本部長さん自らおらっしゃるとはたいそうなことで。」
 白髪の老婆がにこにこして出迎える。
「いえ、仕事ですから。」
 そう、言い終わらないうちに鬼の面をかぶった連中が、服の上からコロコロと粘着テープを転がしてくる。
「なんです?」
「気にせんで。埃をとってますけえの。」
 そんなに汚れてはいないと思うのだが、されるがままにした。
「ここらじゃ、棒を持った三匹の鬼が突っついて回るベッチャー祭りってのがあっての。客に棒を向けるのは危ないというで、コロコロでもって悪霊を取ってますのんじゃ。じゃからいつしかコロコロ団なんて呼ばれて。」
 秋田のナマハゲも近頃では場所によるが包丁の代わりに勉強道具を持っているらしい。
「悪い子はいねかぁ?」
 ではなく
「勉強わからねえ子ははいねかぁ?」
 と、おしかけ家庭教師のようなことになっているのだろう。

「坂の上から、色々なものを転がしているというのは?」
 大使は率直に尋ねた。
「ありゃ、うちらじゃないきに。ゴロゴロ団の仕業じゃ。あやつらも悪気があってやってるわけじゃないんじゃ。この地方にはお接待っといて、子供に菓子を振舞う習慣があってな。近頃、子供たちもこんようになって、観光客にふるまっとるわけじゃ。あぶないき、やめれっちゅうとるんじゃがな。」

 ゴロゴロ団というのは寺土セツという人物が率いている集団らしい。しかもこの人物、マチの妹ということだった。もし、ゴロゴロ団が反日常組織となれば、その身内のマチの心象も悪くなるというものだ。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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