大雨

文字数 668文字

夏の京都は蒸し暑い。京都では涼を求めて加茂川やその支流で遊ぶ光景が見られる。しかし、今年の夏は違った。長引く大雨で桂川では渡月橋が破損し、加茂川も氾濫寸前になった。
上流にある加茂の端神社の狭い境内には多くの人が避難してきていた。
「岩代様。雨をとめてくれ。」
 彼らは口々に神主である岩代にお願いをする。しかし、岩代にしても雨乞いの祝詞はあげるものの、雨を止める祝詞などしたことがない。そもそも八百万の神々のどなたにあげたものか。

 とにかく、市民の日常は守らねばならない。腹持ちをよくするために餅を食して先ずは、
「とりあえずは雨乞いの竜神様にしてみようか。」
 と考えた。
「かしこみかしこみ申す。」
 祝詞が終わり、皆に一礼した時、ゴーという激しい音が社殿の中に響き渡った。
「雨が益々激しくなりました。」
 巫女の言葉に
「解っておる。ほれ、いたちの最後っ屁というじゃろ。終わり際というものは悪あがきをするものじゃ。すぐに収まるわい。」
 そうは言ってみたものの一向に弱まる気配が無い。
「これからが竜神様にお引取り願うための神様を呼ぶんじゃ。」

 今度は、雷神様に祈祷をする。とたんに、ドンガラガラと雷が近くへ落ちた。
「ほ、ほれ。雷神様が答えてくれたぞ。次は、そうじゃ風神様にしてみるか。」
 祝詞をあげるたびに嵐はひどくなってくる。
「こりゃ、手ごわいな。そうじゃ、お日様じゃ。天照大神にお願いいたそう。」

 かくして嵐は去った。確かにあれは最後っ屁だったのかもしれない。前線の境目には激しい風雨が伴うことも多い。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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