特殊訓練

文字数 601文字

 ユダの場合は、あくまで外国人の矯正に限った活動をしている。信仰の力は大きい。どんな、巨漢でも牧師というだけでおとなしくなる。
それでも、信仰が違えば実力行使に出ることもある。

 この日も、湯上りにマナーの悪い客を見つけた。
「ガー、ペッ!」
 手ぬぐいを腰に巻き、腰に手を当てコーヒー牛乳をクイッと飲み干すと、
「タンヲハイテハ、イケマセン。」
 と注意しに戻った。
「ナンダ、テメエ。オレタチハ、アッラーノコトバシカキカナイ。」
 相手も引かない。
「チー!」
 今度はは手鼻をかむ。こういう相手には桶に水を汲むと
「セイスイ!」
 といって、その冷たい水をかける。
「キャッ!」
 水が湯船で暖まって伸びきった男の股間を直撃する。急激に縮む、その痛さに大の大人が思わず叫ぶ。
「ナニシヤガンデ。カイヘイタイトシッテノコトダロウナ。」
 男は左肩に彫られた黒い碇の刺青をちらつかせた。
「セイスイ!」
 向かってきた男の股間に今度は熱いお湯をかけた。
「アジャ、アジャ、アジャジャ。」
 騒ぎを聞きつけて店主が薪を握ったまま駆けつけてきた。
「お客さん、風呂に入るならタトゥは隠してください。」
 男は、しぶしぶ風呂から出て行く。ユダは黙ってコーヒー牛乳を一本差し出す。
「ハダカノツキアイ。ミンナナカヨシ。」
 二人は仲良く鏡の前に並んで立つと、ビンの中の茶色い液体を一気に飲み干すのであった。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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