コロコロ団

文字数 655文字

 尾道に本部長が着いたのは、昼過ぎだった。さすがにマチはもう帰ってしまったろう。最初の数日は彼女の日常の行動が申告通りか探る。
 彼女の自宅へと向かう。さすが、尾道。市街地を外れると急な坂になる。いりくねった細い坂道を登っていくと、栗が坂をころがり落ちてくる。もう秋なんだなあと思って、一つ二つと見ていると、数十個のいがぐりの団体さんが道幅一杯に広がって向かってくるではないか。
 チクチク。
 避けたところで、容赦なく栗が襲ってくる。下を見ると、老人達が手馴れた様子で栗を拾い集めている。
「ここは、栗の通り道ですか?」

「そぎゃなことあるか。上でコロコロ団ちゅうのんが落としよるけん。わしら、それを拾うとるんよ。よそもんがこの道を通りよると、今の時期は、はあ栗や柚子が道ん上さ、コロコロ転げ落ちるんじゃ。わしらにとって、季節の恵かのう。」
 地元の人にとっては当たり前の光景らしい。しかし、自然に転がってくるとも考えられない。まずは、コロコロ団について調べるか。

「コロコロ団?ああ、そりゃ、坂の上から色んなもんをようけえ転がしてくるやつらのことじゃ。」
「よそもんが近づくと、やられるでな。ほじぇけえ、気いつけんしゃい。」
「目的?そぎゃなことわかりゃせん。お接待のつもりじゃなか?」

 とにかく、坂の上から色んなものを転がしてくる危ない連中だということはわかった。お接待とは、尋ねてきた子供たちにお菓子を配る、この地方のハロウィンのようなものらしい。歓迎されているのか、追い払おうとしているのか。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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