談合

文字数 725文字

「今いくから、そこでおとなしく待っていろ。」
 左半次は、恐る恐る急なはしごを上り始めた。

「旦那、売り切りました。」
 手下の販売員が次々と戻ってきた。
「おっと、団子屋の談合に遅れちまう。皆様。次回の販売は午後3時。時の鐘を合図に開始します。」
 そう叫ぶと、恐怖団は去っていった。

「やい、上ってきたぞ。」
 左半次が震えるひざでやっと屋根に上ると、すでに誰もいなくなっていた。
「え~。誰かいませんか。何か忘れてますよ~。」
 左半次の声に
「いけない。危うく、置いてっちゃうとこだった。ありがとよ。」
 団員の一人があわててはしごを持っていった。

「何だ。また逃がしちゃったよ。」
 客達は勘定を済ませると次々と店を出て行った。
「は~い。ヒーローショーはお終いだよ。今度は3時のおやつで寄っとくれ。」
 店主は客のいなくなった店先を片付け始めた。
「こっちはマジなんだがな。」
 どうにか屋根から下りてきた左半次が支払いをしながら店主につぶやく。

「違法なんだろ。警察は来ないのかい?」
 観光客の一人が店主に尋ねる。
「路上販売なら捕まりますけど、あいつら人の店ん中で売るんですよ。」
「店が通報しないのかい。」
 客は不思議がった。
「それが、最近はあいつら目当てに客が集まるんで誰も文句を言わない。客達が面白がって、左半次をたきつけるんですよ。なもんだからすっかり名物になっちまって。」
「一本百円は高いだろ。」
 客はなおも食い下がる。
「老舗の団子屋で、ものは確か。しかも、串を持っていくと駄菓子が当たるクジ付き。やつの店は商店街から離れてるんで、そうでもしないと客が行かないんでさ。」
 店主は殻の器を奥へ片付けた。
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登場人物紹介

日比野左半次(ひびのさはんじ)

食後にお茶を飲むと日常マンになり悪と戦う。

響ジョウ(ひびきじょう)

川越の団子屋店主。恐怖団団長。

お団子ヘアが特徴。

違法営業で商店街を乗っ取ろうとしている。

新喜六(しんきろく)

桐生の酒屋の店主。

酒饅頭を食べると日常マンになる。

五月蝿岩代(うるさいわよ)

京都の小さな加茂の端(かものはし)神社の神主。

先代の神主である夫・五月蝿以蔵(うるさいぞう)の後を次いだ。

餅を食べると日常ウーマンになる。

井伊ユダ(いいゆだ)

浅草で活動する唯一の外国人、日常マン。

湯上りのコーヒー牛乳で変身する。

牧師である彼は手ぬぐいの白地を表にして首から下げている。

達磨大使(だるまたいし)

日常本部2代目本部長。

全国の日常マンたちの活動を視察して回る。

本部長キャッチコピー『悪が生んだ正義の達磨』

坂野マチ(さかのまち)

尾道で魚の行商をしている。

コロコロ団のゴッドマザー。

茶々戸ネコ(ちゃちゃどねこ)

名古屋の日常ウーマン、茶々戸ネネが飼っているネコ。

その鳴き声を聞くと誰でも名古屋弁がでてしまう。

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